Jリーグ

J3全クラブ監督通信簿&続投可能性【2025シーズン総括】

AC長野パルセイロ 写真:Getty Images

AC長野パルセイロ:藤本主税監督

評価:★☆☆☆☆/続投可能性:100%

藤本主税監督1年目の長野は、2025シーズンを19位で終えた。JFLでHonda FCが優勝したため、J3・JFL入れ替え戦に回ることは免れているが、今季はJ3昇格以降クラブ史上最悪の成績となった。

総失点57と守備の崩壊が目立ったうえ、総得点29は最下位のアスルクラロ沼津よりも11点少ないリーグ最低の数字。得失点差マイナス28もJ3ワーストで、攻守両面に深刻な課題を残した。新監督の下で志向したポゼッションサッカーは機能せず、理想と現実のギャップが浮き彫りとなった。

それでもクラブは短期的な結果にとらわれず、長期的な視点に立って藤本監督の続投を決断。オフには戦力の大幅な入れ替えが不可欠となるが、現有戦力を維持したままではサポーターの不満がさらに高まる可能性は否めない。来季前半にJ2・J3混合で開催される百年構想リーグでは昇降格こそ存在しないものの、内容次第では途中解任という選択肢も現実味を帯びてくる。藤本監督にとって、来季はまさに背水の陣となる。


早川知伸監督 写真:Getty Images

松本山雅:早川知伸監督

評価:★★☆☆☆/続投可能性:0%

2025シーズン、開幕から下位に低迷した松本は最終的に15位でフィニッシュ。11月28日に早川知伸監督の退任を発表し、12月8日には石﨑信弘新監督就任を正式に発表した。

J3降格後ではワーストとなる成績だけに、指揮官交代は避けられなかったと言える。ただし、2012年から2019年まで8シーズンにわたりチームを率い、J1昇格も成し遂げた反町康治前監督(現清水エスパルスGM)の退任以降、監督交代を繰り返してきたクラブ体質は、いまだ改善されていない。

“昇格請負人”の異名を取る石﨑監督だが、これまで指揮したのべ12クラブの中で、就任初年度に昇格へ導いたのは、2006シーズンの柏レイソルと2014シーズンのモンテディオ山形の2例のみ。その他のクラブでは昇格に届かなかったケースや、成績低迷による途中解任も少なくない。八戸でもJ2昇格までに3シーズンを要している。石﨑監督の采配以上に、松本のフロントとサポーターが「3年計画」を受け入れ、腰を据えてチームを支えられるかどうかが、今後の行方を左右する最大のポイントになるだろう。


鈴木秀人監督 写真:Getty Images

アスルクラロ沼津:鈴木秀人監督

評価:★☆☆☆☆/続投可能性:10%

9月14日、中山雅史前監督の退任に伴い、ヘッドコーチから昇格する形で指揮を執ることになった鈴木秀人監督。しかし、すでに最下位に沈んでいたチームを立て直すことはできなかった。就任後に連勝は一度もなく、夏場には7連敗を喫したほか、3連敗も2度経験。最終的には19位クラブとの勝ち点差が7まで広がった。本来であれば自動降格の成績だったが、JFLで同じ静岡県のHonda FCが優勝したことで、規定により入れ替え戦に回る幸運に恵まれた。

しかし、その入れ替え戦でも流れを変えることはできなかった。JFL2位のレイラック滋賀との入れ替え戦第1戦(12月7日/平和堂HATOスタジアム)を2-3で落とすと、第2戦(12月14日/愛鷹広域公園競技場)も1-1で引き分け。2戦合計3-4で敗れ、2017シーズンから9シーズンにわたって守り続けてきたJ3の座から滑り落ちる結果となった。第2戦を前に鈴木監督は「開き直ってやるしかない」とコメントしていたが、その言葉には、どこか“これが最後になる”という覚悟をにじませているようにも映った。

前任の中山前監督は攻撃的なサッカーを志向し、開幕戦のガイナーレ鳥取戦では3-0の快勝を収めたものの、その後は長く勝利から遠ざかり、2勝目は6月8日の第15節ツエーゲン金沢戦まで待たされた。以降も接戦を落とす試合が続き、勝負弱さが際立った。後を託された鈴木監督自身も、2019シーズンに古巣ジュビロ磐田の監督に就任するも、1か月で体調不良により退任。2020シーズンには磐田の強化部長を務めたが、2022シーズン途中でその職を離れている。

JFL降格という結果を踏まえれば、続投の可能性は限りなく低いと言わざるを得ず、公式発表こそ控えられているものの、水面下ではすでに次期監督選定が進んでいる可能性が高い。


石丸清隆監督 写真:Getty Images

FC岐阜:石丸清隆監督

評価:★★★☆☆/続投可能性:100%

2025シーズン、石丸清隆監督は愛媛FCの指揮官としてシーズンをスタートしたが、成績不振により5月21日にJ3で最も早いタイミングで解任された。その後、7月4日に大島康明前監督を解任したFC岐阜が後任として石丸氏を招聘。シーズン途中での就任という難しい状況下で、再びJ3の舞台に戻ることとなった。

就任直後からチームは持ち直し、第25節から第30節まで怒涛の6連勝を記録。降格圏から一気に抜け出し、最終的には13位まで順位を押し上げた。総得点52と攻撃力はリーグ水準以上だった一方、総失点60と守備面には明確な課題も残した。カウンターを軸とした現実的なスタイルが奏功し、シーズン途中からの“巻き返し”には成功したものの、序盤戦の出遅れが最終順位に影を落とした。

石丸監督の強みである選手マネジメントは岐阜でも発揮され、若手の積極起用と競争意識の醸成に成功。こうした点が評価され、12月10日に続投が正式発表された。ただし来季に向けては、守備陣の補強が不可欠だろう。戦力バランスが整えば、石丸監督の手腕がより明確に結果へと反映されるシーズンになるはずだ。


辻田真輝監督 写真:Getty Images

ツエーゲン金沢:辻田真輝監督

評価:★★★★☆/続投可能性:90%

6位で昇格プレーオフに進出したものの、準決勝のFC大阪戦(Axisバードスタジアム/0-1)で敗れ、J2復帰の夢は潰えた辻田真輝監督の金沢。2025シーズンは伊藤彰前監督体制で開幕したが、順位が2桁に沈んだ6月3日に解任され、当時強化部長だった辻田氏が後任監督に就任した。

就任直後は2連敗、夏場には3連敗を喫するなど前途多難を感じさせたが、第24節に敵地で栃木シティを撃破したことを契機に流れが一変。そこからチームは快進撃を見せ、最終的に11勝4敗と大きく勝ち越してプレーオフ圏内を確保。途中就任とは思えない安定感で結果を積み上げ、10月の月間最優秀監督賞にも選出された。

辻田監督は2023年にJFA Proライセンスを取得し、トップチーム監督としては今季が初挑戦。41歳の若き指揮官に対し、クラブが来季も託す可能性は高い。懸念材料があるとすれば、他クラブからの引き抜きだろう。ただ、地元出身(星稜高校卒業)という背景もあり、まずは金沢で確かな実績を積み上げ、その先にステップアップを見据えるキャリアを描いていくのではないだろうか。


薮田光教監督 写真:Yusuke Sueyoshi

FC大阪:藪田光教監督

評価:★★★★☆/続投可能性:80%

FC大阪は大嶽直人監督(来季よりカマタマーレ讃岐監督)体制で2025シーズンをスタートし、序盤は首位争いを演じていた。しかし第18節から第25節まで1勝3敗4分けと失速し、順位を6位まで落としたことを受け、8月31日に監督交代を決断。ヘッドコーチを務めていた藪田光教氏が昇格する形で新指揮官に就任した。

極めて難しいタイミングでの就任となった藪田監督は、当初こそ苦戦が続いたものの、10月に入ってからチームは本来の力を取り戻す。終盤戦は7勝1敗1分けと大きく勝ち越し、最終的に3位で昇格プレーオフ進出を決めた。ただし、自動昇格を果たした2位ヴァンラーレ八戸との勝ち点差はわずか「1」。結果として、「プレーオフ進出」よりも「自動昇格を逃した」という印象が強く残るシーズンとなった。

それでも、一時はプレーオフ圏内すら危うかった状況を立て直した点を踏まえれば、Jリーグでのトップチーム初采配となった藪田監督の手腕は評価に値する。昇格を逃したことで、クラブが監督交代に踏み切る可能性が完全に消えたわけではないが、現時点では続投が基本線と見るのが妥当だろう。


奈良クラブ 写真:Getty Images

奈良クラブ:小田切道治監督

評価:★★★★☆/続投可能性:0%

奈良は中田一三前監督体制で2シーズン目を迎えていたが、プレーオフ圏も視野に入る順位につけていた6月12日、突如として契約解除を発表。その理由は「練習中の不適切行為」とされた。後任には、5月にカターレ富山を解任されたばかりの小田切道治監督を招聘した。

小田切監督就任後の成績は10勝7敗6分け。最終節まで昇格プレーオフ進出の可能性を残す健闘を見せたが、最終順位は9位にとどまった。総得点50、総失点46と攻守のバランスが取れたチームを構築したものの、クラブは今季限りでの交代を決断し、12月8日に小田切監督の退任を発表している。

小田切監督にはすぐにJ3へ降格したレノファ山口からオファーが届き、次期監督に就任。一方の奈良クラブは、新監督として元日本代表FWの大黒将志氏を招聘する方針を固めた。12月12日には浜田満社長がSNSで「新監督との契約書にサインしました」と投稿しており、近日中に正式発表される見通しだ。45歳のルーキー監督がどのようなチームを作るのか、その手腕に注目が集まる。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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