
FIFAワールドカップ(W杯)北中米大会アジア予選で、森保ジャパン(サッカー日本代表)は3センターバックをベースに戦ってきた。格下相手に攻撃の枚数を増やす意図が見てとれたが、アジア予選終了(6月)後の国際親善試合でも、セントラル・ディフェンダーをこなす多くの選手が負傷離脱する中で3バック的なフォーメーションを主に敷いている。
なぜ森保一監督は、この布陣を重用するのか。その狙いと背景を探ってみたい。

「戦術カタール」の再現ではなく“発展形”
史上初の勝利を挙げた10月14日のブラジル代表戦で、日本代表は3センターバック(渡辺剛、谷口彰悟、鈴木淳之介)を採用した。強烈な3トップを擁するブラジルに対し、4バックではなく5バック(堂安律、渡辺、谷口、鈴木、中村敬斗)で守備ブロックを築いた形だ。
10月10日のパラグアイ代表戦、9月9日のアメリカ代表戦、9月6日のメキシコ代表戦でも3バックを採用しており、今シリーズの基本布陣となっている。アメリカ戦の後半に4バック(2センターバック)を試したが、時間は限定的だった。
ブラジル戦では、前半に人数をかけて耐え、後半にウイングバックを押し上げて攻撃へ転じた。【5-4-1】のシステムで試合に入り、後半に【3-6-1】(3-4-2-1)に切り替えた。2失点は喫したが、守備から攻撃への切り替えは機能した。「戦術カタール」の継承とも言える戦いぶりである。
2022年のカタールW杯で日本代表は、ドイツ代表とスペイン代表を逆転で撃破し、3バックと4バックを自在に切り替える柔軟性を見せた。今回の3バックは、その経験を土台にした発展型システムと言える。

選手変更なしで攻守をスイッチ
3センターバックの最大の利点は、選手交代なしで守備的にも攻撃的にも切り替えられる柔軟性にある。両ウイングバックの位置を前後させるだけで、守備偏重の5バックにも、超攻撃的な【3-4-3】や【3-2-5】にも変化させることができる。
試合中に細かい修正を繰り返す国際舞台では、この即応性が大きな武器となる。
さらに代表チームは活動期間が限られており、クラブのように戦術を練り込む時間がない。したがって、同じ基本システムで戦い続けることで連携を高めやすくなる。森保監督が3バックを固定的に使うのは、限られた準備期間の中で安定した守備ブロックと超攻撃的な布陣へのシフトチェンジを両立させる合理的判断でもあるだろう。
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