
プレミアリーグのアーセナルは2021/22シーズンに、ミケル・アルテタ監督体制の下で新たな方向性を示し始めていた。若手中心の才能ある選手たちが揃い、クラブ全体がまとまりを見せていた時期だった。その流れの中で存在感を放ったのが、2025年まで同クラブに所属していた日本代表DF冨安健洋である。
冨安は22歳だった2021年8月31日にセリエAのボローニャから移籍金1,980万ポンド(約39億円)でアーセナルに加入した。アーセナルで問題視されていた右サイドバックの定位置を任されると、デビューからすぐに適応。プレミアリーグ開幕から10試合で7勝を挙げ、最下位から5位まで浮上する原動力となった。しかし同年12月末に負傷し、続く試合でさらに故障を重ねたことで約4か月離脱。その後もふくらはぎや膝の怪我が繰り返され、1シーズンでリーグ戦22試合以上に出場することはなかった。
UKメディア『Football.London』はデビューシーズンを「守備は完璧で技術も優れ、右サイドをチームの弱点から強みに変えた」と評したが、度重なる故障が成長を阻んだ。
2022/23シーズンからはベン・ホワイトが右サイドバックに起用され、冨安は控えに回る場面が増えた。その後、膝の手術を経て翌シーズンには左サイドバックとしても起用され、2023/24シーズンはクラブが優勝にあと2点届かなかった中で奮闘した。だが昨2024/25シーズンはわずか6分間の出場に終わり、再び膝を手術して戦列を離れた。
2025年7月、契約を1年残したまま、冨安とアーセナルは双方合意で契約を解除。26歳にして無所属となった。冨安は幼少期にスペインのバルセロナ下部組織「エスクォーラ福岡」に所属し、その後アビスパ福岡(J1)、シント=トロイデン(ベルギー1部)、ボローニャを経てアーセナルへと歩んだ。日本代表としても2019年AFCアジアカップ決勝で主将を務めた経験を持ち、アーセナル加入時点で23キャップを誇っていた。
現在は2月に受けた膝の手術からの復帰を目指しており、年内の復帰が目標とされる。スペインメディア『Fichajes』の報道によればセリエAのミランが冨安の動向を注視し、ラ・リーガのレアル・オビエドも関心を示しているという。
冨安の完全復調が確認されれば、さまざまなチームからオファーは舞い込むはずだ。まだ26歳とキャリアの大半はこれから残されている冨安、失われた時間を取り戻し、ピッチに立ち、本来の輝きを取り戻せるかが注目される。
コメントランキング