
明治安田J2リーグは、J1昇格を目指すクラブにとって熾烈な戦場だ。しかし、気がつけば長年J2に留まっているクラブも少なくない。かつてJ1を経験した実績を持ちながら、J2に沈み続ける“J2沼”とも言える状態に陥るケースも多い。
そんな「J2常連クラブ」には、いくつかの共通点がある。J3降格の心配は少ないが、J1昇格争いに絡めない。なぜ彼らは昇格を果たせないのか。ここでは長期的な視点から、J2に定着するクラブの特徴と問題点について紹介する。

昇格のプレッシャーと負のループ
J2には「昇格しなければならない」というプレッシャーが年々強まる構造がある。特にJ1在籍経験があるクラブはサポーターの期待も高く、クラブ側も大型補強や短期的成果を優先しがちだ。しかし、昇格に失敗し続けるとファンの不満は高まり、クラブはさらに無理な補強に走る。結果としてチームのバランスが崩れ、監督交代を繰り返すことで戦術の積み上げも断たれてしまう。
「昇格失敗→フロントが焦る→中途半端な補強→結果が出ない→サポーターが不信感を抱く→また昇格失敗」というループに陥ると、クラブの成長が止まりJ2に定着してしまう。シーズン前には昇格有力と期待されることが多いヴァンフォーレ甲府やジェフユナイテッド千葉だが、実際には終盤に失速し昇格を逃すシーズンが続いている。
2022シーズンに18位と低迷しJ1昇格から遠ざかった甲府は、翌2023シーズンには一時プレーオフ圏内に浮上するも最終的には8位でシーズンを終え、惜しくも昇格プレーオフ進出は果たせなかった。一方の千葉は、2022シーズンを10位で終え悔しさの残る結果となった。2023シーズンは6位で昇格プレーオフに進出したものの昇格には届かず、J1復帰は果たせていない。
このように、両クラブともシーズンの序盤・中盤では上位争いに加わる場面がある反面、重要な終盤戦で勝ちきれない展開が目立ち、昇格にあと一歩届かない状況だ。

J1を引きずる中途半端な補強と編成
J2において重要なのは、予算規模に見合った編成と泥臭い試合で勝ち点を拾うスタイルの確立だ。ところが、J1経験クラブの多くは過去の栄光を捨て切れず、J1でも通用しそうな選手を中途半端に集めてしまう。
問題は、そうした補強が「J2で勝ちきる」ための設計になっていないことだ。例えば高さやセカンドボールへの対応、連戦への耐久性といったJ2特有の要素に目が向いていないと、技術があっても勝率は上がらない。また、シーズン後半に失速するクラブはターンオーバーや若手育成への意識が低く、選手層が薄い。補強面では経験値のある選手に依存する一方で、怪我人発生時の代替がないなど、シーズン全体を見通したチームづくりが不十分だ。
攻撃的なサッカーに固執した結果、本来必要とされる「堅実に守って勝ち点1を積む力」が疎かになり勝ち点を積み上げられない。いかにしてJ2仕様の「勝てるチーム」を作れるかが問われる。
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