
クラブに求められる選手の権利保護への配慮
ロフティングが違法と判断されれば、クラブは選手との契約交渉において従来の圧力的な手法を見直さざるを得なくなる。また、今回のフランスでの判決によって、特にUEFA(欧州サッカー連盟)がモラハラ・パワハラに対して厳格な姿勢を示せば、イングランドやスペインを含む欧州全体のクラブ運営に影響が及ぶと言える。
例えばクラブは、契約満了間近の選手を売却するか、フリー移籍を認めるかの判断を早めに行う必要が出てくるため、より戦略的な移籍市場での動きを迫られるだろう。また、選手との対話や交渉の過程で、精神的な圧力を避けるためのガイドラインや規制が導入される可能性もある。
ムバッペの訴訟では、5,500万ユーロ(約93億円)に上る未払いの給与やボーナスの支払いも争点となっており、選手への未払い賃金や補償金の支払いを求められるケースが増えると思われる。PSGのような資金力のあるクラブであっても、複数の選手から同様の訴訟が提起された場合、財政的な負担は相当な金額に上るだろう。
さらに、フランスサッカー連盟やUEFAがこの問題に介入し、クラブが選手への給与支払い義務を怠った場合にライセンス剥奪などの制裁を科す可能性も指摘されている。 これは、クラブ運営におけるコンプライアンスの重要性を一層高め、選手の権利保護を優先する新たな基準を確立するきっかけとなるかもしれない。
知名度や交渉力の低い若手選手にとっても、ロフティング禁止は特に大きな意味を持ち、不当な扱いに対して声を上げやすくなるだろう。クラブには若手選手の育成や契約管理において、ロフティングのような短期的な圧力に頼らずに選手の成長を促し、クラブへの忠誠心を育むアプローチが求められる。
クラブが選手に対する扱いを改善することでは、ファンと選手の関係にも変化が生じるだろう。選手が不当な扱いを受けていると感じた場合、ファンからの選手への支持や、クラブに対する批判が高まるかもしれない。
クラブ側は、PSGがムバッペに対して提示した「クラブ史上最高額の契約」が破談に終わったように、単なる金銭的なインセンティブだけでなく、選手のキャリアやビジョンを共有することが重要になる。選手を“交換可能な消耗品”として扱うのではなく、個人としての尊重やキャリアのサポートを重視する文化が求められる。
ムバッペの訴訟は、サッカー界の古い慣習に一石を投じるものであり、今後の動向が注目される。パリの検察当局による捜査の結果や、UEFAやフランスサッカー連盟の対応が、サッカー界の未来を形作る重要な要因となるだろう。その決定はサッカー界のみならず、「雇用主」と「被雇用者(労働者)」が形作っている一般社会にも通じる懸案とは言えないだろうか。
コメントランキング