
ニュージーランドからオーストラリア、試合の度に国際線
ニュージーランドの首都ウェリントンを本拠としながらも、オーストラリアのAリーグ・メンに参戦しているウェリントン・フェニックスも、サポーターのアウェイ遠征が厳しいクラブだ。
ニュージーランドからは、元日本代表DF酒井宏樹が所属し創設1年目にしてAリーグのレギュラーシーズンを制した(プレーオフラウンドでは準決勝敗退)オークランドFCも参加している(FIFAクラブワールドカップ2025に出場しているオークランド・シティとは別クラブ)。
この2クラブは当然ながら、選手もサポーターも試合の度に国際線でオーストラリアとの国境を越える必要に迫られる。ウェリントンからシドニーまでは約3時間40分、アデレードまでは約7時間半、パースまで足を伸ばそうとすれば10時間以上のフライトを覚悟しなければならない。
2クラブのサポーターは、アウェイ遠征がすなわち海外渡航となるわけで、パスポートも手放せない。他のAリーグ所属クラブのサポーターにとっても、ウェリントンへの遠征は時間と費用の負担が非常に大きい。

ブラジル、陸路でのアクセスはほぼ不可能な地
サッカー王国ブラジルの例も見てみよう。ブラジルは南米最大の国土で、国内であっても都市間の移動距離が長く、インフラ面でも地域差が大きい。
アマゾナス州リーグのカンピオナート・アマゾネンセと、ブラジル全国選手権2部にあたるカンピオナート・ブラジレイロ・セリエBに所属しているアマゾナスFCの本拠地アマゾナス州マナウスは、サンパウロやリオデジャネイロから約2,700~3,000キロ。飛行機では約4~5時間(往復航空券は約3万~5万円)が必要だ。
アマゾンの奥地にあり、道路が未整備なため陸路でのアクセスはほぼ不可能。加えて常に30度以上の高温多湿な気候と、航空便の少なさが遠征を困難にする。
クラブW杯にも出場しているフラメンゴ、フルミネンセ、ボタフォゴといったリオデジャネイロ州のクラブ、パルメイラスなどサンパウロ州のクラブのサポーターにとって、飛行機のコストと長時間の移動、熱帯気候への適応が大きなハードルとなる。
また、マナウスのホームスタジアム、アレーナ・ダ・アマゾニアへのアクセスが市街地から遠いことも、アウェイサポーターの足を鈍らせている。

ACLでのアウェイ遠征も一般的に
以上の例から、これらのクラブのサポーターがアウェイ遠征に向かう(あるいは対戦相手のサポーターが来場する)絶対数は、欧州各国リーグやJリーグと比べて少ない。よってホーム戦ではほぼ100%自軍のサポーターで埋め尽くされ、いわゆる「ホームアドバンテージ」を得られる。一方でアウェイ戦ではその逆となり、雰囲気は戦い方にまで影響する。
Jクラブでホームとアウェイの差が感じられた例としては、横浜F・マリノスの2024/25シーズンのACLE(AFCチャンピオンズリーグエリート)決勝のアル・アイン(UAE)戦が挙げられるだろう。横浜FMはホームで行われた第1戦(2025年5月11日)を2-1で勝利したにも関わらず、アウェイの第2戦(5月26日)で1-5の大敗。2戦合計3-6で優勝を逃した。応援に駆け付けたサポーターも少なくなかったが、中東独特の雰囲気に飲まれた格好となった。
一方で、「完全アウェイ」を物ともしなかった例もある。1998/99シーズンのアジアクラブ選手権決勝を戦ったジュビロ磐田だ。対戦相手はイラン随一のビッグクラブのエステグラル。しかも会場はエステグラルのホームであるアザディ・スタジアムだった。当時の収容人員10万人全てがエステグラルを応援する中、DF鈴木秀人(2010年引退)とFW中山雅史(2021年引退)の得点でスタジアム全体を黙らせ、磐田は優勝を勝ち取った。
ACLでのアウェイ遠征も一般的となり、海外での日本代表戦ではアンダー世代の試合でも日本人サポーターの姿が見られるようになった。それは素晴らしいことでありつつ、Jクラブおよび日本代表が「完全アウェイ」の環境下で真の実力を発揮できるのかが、新たな課題でもある。
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