
その他のスペイン4クラブ
ビジャレアル
久保が2020/21シーズンに期限付き移籍したビジャレアル。当時はウナイ・エメリ監督の戦術に合わず、MFジェレミ・ピノのブレークもありレギュラー確保に失敗した。キャリアで初めて欧州カップ戦(ヨーロッパリーグ/EL)にも出場し移籍後初得点も決めたが、ビジャレアルでの得点はその1ゴールだけで、リーグ戦では無得点に終わった。今年4月20日にソシエダの一員として古巣戦に臨んだ際(2-2)には、敵地エスタディオ・デ・ラ・セラミカの観衆から久保に向けブーイングが飛んだ。
現マルセリーノ・ガルシア・トラル監督の戦術は、【4-4-2】と【4-2-3-1】を併用し、サイド攻撃を重視している。久保のプレースタイルがマッチする可能性はあるが、ピノやコートジボワール代表FWニコラス・ペペ、スペイン代表MFアレックス・バエナとの厳しい競争が待っている。しかし、ELどころか欧州チャンピオンズリーグ(CL)出場権を得られれば、ステップアップには適している。過去のトラウマやサポーターからの反発がなければ、再入団の可能性もあるだろう。
レアル・ベティス
そのビジャレアルに迫るのが、かつて元日本代表MF乾貴士(現清水エスパルス)が2018シーズンに加入したもののレギュラーになれず、たった半年でデポルティーボ・アラベスへの期限付き移籍を余儀なくされたクラブ、レアル・ベティスだ。
ベティスの右ウイングには、FWエセキエル・アビラ、FWアイトール・ルイバル、MFセルジ・アルティミラと多士済々な選手が揃い、トップ下には元スペイン代表MFイスコが君臨している。しかしながら、いずれも絶対的なレギュラーとは言い切れない。
そして、久保はテクニシャン好みの指揮官、マヌエル・ペジェグリーニ監督が好きそうなタイプで、監督に就任した2020年にも獲得に興味を示していたことからチャンスはありそうだ。仮に逆転でCL出場となれば2004/05シーズン以来とあって、高額移籍金を支払ってでも欲しいタレントだろう。攻撃的ながらも守備意識も高く、ハイプレス戦術にも対応可能であることで、久保の創造性が生きる環境が揃っていると言えるだろう。
セルタ・デ・ビーゴ
セルタ・デ・ビーゴの右ウイングにはMFイケル・ロサーダやMFアルフォンソ・ゴンサレスが起用されているが、いずれも確固たる地位を築けていない。久保の実績を考慮すれば、即レギュラーも可能だろう。
しかし、いくら欧州カップ戦に出場できると言っても、セルタはガリシアの地方クラブに過ぎない。ソシエダよりも明らかに格下であり、久保のキャリアにとって後退となるリスクもある。出場機会を得られるという面で魅力的な選択肢だが、将来的なビッグクラブ移籍を目指すなら回り道となってしまいかねない。
オサスナ
ソシエダと同じ、バスク地方(州はバスク州の隣のナバーラ州)のパンプローナを本拠とするオサスナの右ウイングにはMFルーベン・ガルシアやMFジョン・モンカヨラが起用されているが、いずれも攻撃面での迫力には欠ける。そもそも、ビセンテ・モレノ監督は【5-4-1】のフォーメーションを用いる守備的な戦術で、そこに久保が加わったところで、果たして良さが生きるのかという疑問は残る。キャリアアップという観点からも外れるだろう。
レアル・ソシエダ残留の目も
以上の観点で4クラブを比較し、久保にとって最適な移籍先を評価すると、ベティス、ビジャレアル、セルタ、オサスナの順となる。ベティスであれば、右ウイングのスタメンを確保できる可能性が高い上、クラブの“格”の面でもソシエダと遜色ない。
なおかつ、久保のプレースタイルが、ベティコと呼ばれる情熱的なサポーターに歓迎されることは請け合いで、本拠地のエスタディオ・ベニート・ビジャマリンを熱狂させることだろう。クラブは日本市場を開拓しようと3月にクラブ幹部が来日し、東京ヴェルディのクラブハウス視察や、ファンとの交流イベント「ベティス・ウィーク」を開催した。その延長線上で久保獲得に動く可能性もあるのではないか。
スペインにおいて、バルセロナ、レアル・マドリード、アトレティコ・マドリードの3強以外のクラブは「オトラ・リーガ(別のリーグ)」と呼ばれるほど、その格差は大きい。スペインでプレーする以上、3強を目指すのは当然だが、その結果がベンチウォーマーでは意味が無い。日本のファンも、久保がビッグクラブのベンチに座る姿よりも、レギュラーとして存在感を発揮している姿が見たいはずだ。
さらに言えば、ソシエダは来2025/26シーズンの新監督に今季Bチームを率いていたセルヒオ・フランシスコ氏の内部昇格を発表した(4月26日)。事実上の“アルグアシル監督路線の継承”を選択したとあって、久保にとっては急転直下の「ソシエダ残留」の目も出てきたと言えるだろう。
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