
4月16日、明治安田J1リーグ第12節、日産スタジアムで開催された横浜F・マリノス対清水エスパルスの一戦は、横浜FMが後半6分まで2点リードしていたにも関わらず、そこから3失点を喫し2-3で敗れた。12日に行われたアビスパ福岡戦(ベスト電器スタジアム/1-2)に続く逆転負けとなり、横浜FMはこれでリーグ戦6戦勝ちなしで降格圏の19位に沈む。
清水戦では2枚、福岡戦でも3枚の交代カードしか切らなかったスティーブ・ホーランド監督に対し、横浜FMサポーターの怒りは爆発寸前。同日に開催されたルヴァン杯ファーストラウンド2回戦でPK戦の末、J2カターレ富山に敗れた名古屋グランパスの長谷川健太監督に対する批判も相まって、Xのトレンドには「監督解任」が上がった。
そして“無策”の烙印を押されたホーランド監督は、4月18日に電撃解任が発表された。後任にはヘッドコーチのパトリック・キスノーボ氏が昇格し、暫定的に指揮を執ることとなった。
万が一、このまま横浜FMにとって初のJ2降格が現実となればどうなってしまうのか。横浜FMもその一員に名を連ねているシティ・フットボール・グループ(CFG)との関わりに変化は生じてくるのか。CFGとの関わりという観点で、今後の横浜FMを占っていきたい。

横浜FMの現在地
J1は稀に見る大混戦、ACLE準々決勝で風向きが変わる?
今2025シーズンからイングランド代表やチェルシーのヘッドコーチを務めたこともあるホーランド氏を新監督に迎えた横浜FMだが、相次ぐケガ人に悩まされ、特に主将のMF喜田拓也の離脱、DFリーダーとして期待されて入団したコロンビア人DFジェイソン・キニョーネスの負傷もあり、台所事情を苦しくしていた。
現時点で他チームよりも1試合消化が多い中、1勝しかできず19位に沈む横浜FMだが、救いがないわけではない。今季のJ1は稀に見る大混戦で、首位を走るアビスパ福岡との勝ち点差はまだ11だ。3連勝でもすれば一気に中位にジャンプアップできる。横浜FMの総得点は10だが、総得点9のファジアーノ岡山が4位にいることを考えれば、失点癖が改善できればチーム状態も上向くだろう。
さらに、20日に行われるJ1第11節浦和レッズ戦(埼玉スタジアム)後には、サウジアラビアでセントラル開催されるACLE(AFCチャンピオンズリーグエリート)準々決勝で27日、ポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウドや、セネガル代表FWサディオ・マネを擁するアル・ナスル(サウジアラビア)戦に向かう。
ここで勝利すれば、一気に風向きが変わる可能性もある。リーグ戦で四苦八苦するチームが天皇杯やルヴァン杯で快進撃を演じるケースは“Jリーグあるある”だが、ビッグネームを揃えた金満クラブを完全アウェイの状態で下すとなれば、息を吹き返す可能性も十分あるだろう。
しかし仮にACLエリートで優勝したとしても、当然ながらそれがJ1順位表に反映されるわけではない。それどころか酷暑の中での試合を強いられ、コンディションを悪くして帰国する可能性もある。優勝賞金はなんと1,000万ドル(約14億円)であり、準々決勝進出で既に700万ドル(約10億円)を手にしている横浜FMだが、その代償は少なくないのだ。

CFGは横浜FMの買収に動くのか
横浜FMとシティ・フットボール・グループ(CFG)の関わりは、2014年、オーナー企業の日産自動車との「グローバルサッカーパートナーシップ」を締結したことによる。株式比率は約20%。CFGの日本法人シティ・フットボール・ジャパンは当初、過半数の株式を取得し、買収する意思はないとしていたが、2020年、Jリーグ規約の改正で外資系企業によるJクラブの保有が解禁された。
昨2024年、当時J3の大宮アルディージャがオーストリアのエナジードリンクメーカー「レッドブル」に買収され、「RB大宮アルディージャ」に生まれ変わった。先立って外資系企業とのコネクションを持った横浜FMも、状況が変わったことでこれに続く可能性は否定できないだろう。
CFGが株式の過半数を保有する実質上のオーナーとなっているクラブは以下の通り。
- マンチェスター・シティ(プレミアリーグ)2008年買収
- ニューヨーク・シティ(MLS)2013年買収
- メルボルン・シティ(Aリーグ・メン)2014年買収
- ジローナ(ラ・リーガ)2017年買収
- モンテビデオ・シティ・トルケ(ウルグアイ2部)2017年買収
- ムンバイ・シティ(インディアン・スーパーリーグ)2019年買収
- 深圳新鵬城(当時四川九牛)(中国スーパーリーグ)2019年買収
- ロンメル(ベルギー2部)2020年買収
- トロワ(フランス2部)2020年買収
- クルブ・ボリバル(ボリビア1部)2021年買収
- パレルモ(セリエB)2022年買収
- ECバイーア(ブラジル・カンピオナート・ブラジレイロ・セリエA)2022年買収
CFGが買収したクラブに共通して言えることは「強いクラブを買収して、さらに強くする」「弱小だったクラブを買収し、人的かつ金銭的リソースを掛け強化する」ことだ。前者の代表がマンチェスター・シティで、後者の代表がジローナといったところか。
18日に横浜FMの暫定監督に就いたキスノーボ氏も、メルボルン・シティ(2020-2022)、トロワ(2022-2023)で監督を歴任したCFG人脈の1人だ。
日産自動車の業績不振も相まって、CFGが横浜FMの買収(株式比率を上げ過半数とする)に動くのかもだが、そもそもCFGが横浜FM買収にメリットを見出しているのかも気掛かりな部分だ。
コメントランキング