CL/EL チャンピオンズリーグ

【欧州CL】下馬評を覆し旋風を巻き起こしたクラブ5選

写真:Getty Images

UEFAチャンピオンズリーグ(CL)の準々決勝が火ぶたを切った(4月9〜17日)。8強に残ったクラブは、5月31日にドイツ、ミュンヘンのアリアンツ・アレーナで行われる決勝へ向けて一戦必勝で臨み、名勝負が生まれてくる期待感に包まれる。

今回8強に残ったのは、アーセナル(プレミアリーグ)、アストン・ビラ(プレミアリーグ)、ボルシア・ドルトムント(ブンデスリーガ)、バイエルン・ミュンヘン(ブンデスリーガ)、バルセロナ(ラ・リーガ)、レアル・マドリード(ラ・リーガ)、インテル(セリエA)、パリ・サンジェルマン(PSG/リーグ・アン)。

7クラブがUEFAクラブランキング10位以内である中、同ランキング47位のビラが異彩を放っている。ビラはリーグフェーズでの組み合わせに恵まれた印象もあるが、バイエルンを破りノックアウトフェーズへのストレートインぎりぎりの8位で突破すると、決勝Tラウンド16ではクラブ・ブルージュ(ベルギー・プロリーグ)を2戦合計6-1で一蹴。既に国内リーグ4連覇を決めているPSGとの準々決勝を戦っている。

ビラは現在、プレミアリーグでも欧州カップ戦出場圏(6位)から勝ち点差2の7位につけているとあって、難しいチームマネジメントが求められるが、そこは経験豊富なスペイン人指揮官ウナイ・エメリ監督の手腕に注目だ。

過去のCLでも下馬評を覆して旋風を巻き起こしたクラブが存在し、世界のサッカーファンを驚かせた。ここではそんなクラブを、大会前の予想やクラブの規模、歴史的実績、活躍した選手などを挙げながら紹介していきたい。


内田篤人 写真:Getty Images

シャルケ04(ドイツ)2010/11CLベスト4

シャルケには2010/11シーズン当時、元日本代表DF内田篤人が所属。元スペイン代表MFラウル・ゴンザレス、ドイツ代表GKマヌエル・ノイアー、元オランダ代表FWクラース・ヤン・フンテラールなどを擁し、DFBポカールでも優勝した。

CLではグループステージを2位で通過。決勝Tラウンド16ではバレンシア(ラ・リーガ)を破り、準々決勝では前回王者のインテルを2試合合計7-2で圧倒。特にサンシーロでのアウェイ戦で5-2という衝撃的な勝利を収めた。

準決勝でマンチェスター・ユナイテッドに2戦合計1-6で敗れたが、ブンデスリーガで優勝経験のないクラブの快進撃は大きなサプライズと見なされると同時に、日本人選手がビッグイヤー(CL優勝トロフィー)に最も近付いた大会として記憶されている(2019/20CL決勝では当時バイエルン所属の元日本代表MF宇佐美貴史がベンチ入りしたが出場機会はなかった)。

時は東日本大震災直後。翌日の2011年3月12日に行われたリーグでのアイントラハト・フランクフルト戦後に、内田は「日本の皆へ。少しでも多くの命が救われますように。共に生きよう!」という手書きでユニフォームに書かれたメッセージを、中継カメラを通じて世界に届けた。

この試合でシャルケは2-1でフランクフルトに勝利。後半39分の決勝ゴールは、GKノイアーが蹴ったロングボールから決まったものだった。ノイアーは試合前に内田がシャツにメッセージを書いている姿を見て、内田が「負けたら見せないけど、勝ったら見せる」と伝えると、ノイアーは「俺が勝たせる」と言葉を返し、有言実行したエピソードが残されている。快進撃の裏にはチームの一体感があったことを裏付けている。


フアン・カルロス・バレロン 写真:Getty Images

デポルティーボ・ラ・コルーニャ(スペイン)2003/04CLベスト4

スペインのガリシア州にある一地方クラブに過ぎなかったデポルティーボは、2003/04シーズンにCLベスト4に進出。準々決勝で前回王者だったミラン(セリエA)を相手にアウェイの第1戦で1-4で敗れながらもホームの第2戦は4-0で破り、2戦合計5-4という歴史的な逆転劇を演じたことで「スーペル・デポル」と呼ばれた。

“スペインのジダン”の異名を取った元スペイン代表MFフアン・カルロス・バレロン(現カナリア諸島代表監督)を中心に、元スペイン代表DFマヌエル・バブロ、元ブラジル代表MFマウロ・シルバ、元ウルグアイ代表FWワルテル・パンディアーニといった玄人好みの選手を起用し、実にスペイン国内10クラブで指揮を執ったハビエル・イルレタ監督が志向する攻撃サッカーで一時代を築いた。

ミランを破った直後に同監督は「私が監督になって以来、最高の試合」と選手たちを絶賛。今ではスタンダードとなった【4-2-3-1】のフォーメーションを定着させた戦術家でもある。準決勝で後に優勝することになるポルト(プリメイラ・リーガ)に2戦合計0-1で敗れ去ったが、大会ナンバーワンのインパクトを与えた好チームだった。

一時はセグンダ・ディビシオンRFEF(3部)にまで降格し、現在セグンダ・ディビシオン(2部)を戦うデポルティーボだが、ガリシア地方を代表するクラブであることには変わりなく、まずは同じガリシア州のライバル、セルタ・デ・ビーゴとのガリシアダービーの復活が待たれる。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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