
2024年4月から施行された運輸業界における働き方改革関連法により、バスやトラックなどの運転手の時間外労働に上限が設けられ、物流・運送業界などで発生する問題「2024年問題」から1年が経った。
ドライバーの労働時間が年間960時間以内に制限されるもので、休息時間の確保が義務付けられるなど、労働環境の改善が求められるようになった。しかし、この規制強化が、特にJリーグのスタジアムへのアクセスにおいて、様々な問題を引き起こしている。
ここでは「2024年問題」がどのようにスタジアムアクセス面で悪影響を及ぼしているか、また、客離れを引き起こす原因となる可能性について触れていきたい。

埼玉スタジアム、シャトルバス事実上の廃止
Jリーグで不動の集客ナンバーワンを誇る浦和レッズ。ホームの埼玉スタジアム2002へは、埼玉高速鉄道・浦和美園駅から徒歩約20分(約2キロ)を歩くか、国際興業バスが運行している100円のシャトルバス(往路のみ)、あるいは東武鉄道北越谷駅から東武鉄道と茨城急行自動車の共同運行によるシャトルバス(土日祝のみ)というアクセス方法があった。
しかし、このかつてあったJR浦和駅とJR東浦和駅からのシャトルバス2路線が、なくなってしまった。国際興業のウェブサイトによれば「運休中」とあるが、2024年問題による事実上の廃線といっていいだろう。
約63,700人を収容する本スタジアムは、日本代表戦でしかもチケット完売の際には東京駅と新宿駅から「JFAライナー」を運行しているが、これも往路のみだ。最近でいえば、FIFAワールドカップアジア最終予選で3月20日のバーレーン代表戦では運行したが、3月25日のサウジアラビア代表戦では運行されなかった。
一方、最近になって埼玉高速鉄道の東武野田線岩槻駅への延伸計画が前進し、「埼玉スタジアム駅」が新設される予定とあって、日本初の駅上スタジアムとなる公算が高まった。しかし、逆に埼玉高速鉄道への交通集中が起き、ビッグマッチの際に大人数をさばききれるのかという問題も浮上する。
そもそも、浦和市中心部よりも川口市や岩槻市からの方がホームスタジアムに行きやすいという逆転現象が起き、浦和市内に住むサポーターはJR京浜東北線(あるいはJR埼京線)、JR武蔵野線、埼玉高速鉄道と、2度の乗り換えを強いられることに変わりはない。

磐田、清水ホームなどのバス路線も廃止
ジュビロ磐田のホーム、ヤマハスタジアム行きのバス路線も、かつてはJR磐田駅とJR浜松駅から運行されていたが、2020年にスタジアムから徒歩約20分の場にJR御厨駅が開業したことで、全てのバス路線が廃止された。
アクセス方法がバス、タクシー、自家用車しかない清水エスパルスのホーム、IAIスタジアム日本平へのシャトルバスも、JR静岡駅からの便が廃止され、JR清水駅からのシャトルバスのみとなった。
FC東京が味の素スタジアムからの復路として運行していた新宿駅直行バスも、今2025シーズンになってからは一度も運行されていない。
アクセス方法が事実上バス一択のスタジアムの中では、かろうじて鹿島アントラーズの茨城県立カシマサッカースタジアムの東京駅行きのバス路線や、町田ゼルビアの町田GIONスタジアムのバス路線は踏ん張っている。しかし、試合後すぐにでもスタジアムを後にしないと1時間待ちは当たり前だ(カシマスタジアムから東京駅行きの便は予約が必須)。
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