ワールドカップ 日本代表

W杯ポット1入りへ。日本代表がFIFAランキングを上げるには

久保建英 写真:Getty Images

なぜW杯出場を決めた後も必勝が求められるのか

バーレーン代表戦後に報道陣の囲み取材に答えたMF久保建英は、あくまで願望と前置きした上で、対戦相手の希望にイタリア代表(9位)とモロッコ代表(14位)を挙げた。彼がFIFAランキングを念頭に入れた上で発言したのかは不明だが、わずかでもポイントを稼ぎ、1つでもランキングを上げるという目的にも即した、理にかなったチョイスとも言える。

なぜW杯出場を決めた日本代表に、今後も必勝が求められるのか。それはW杯欧州予選が幕を開けたからである(3月21日)。欧州枠は今大会から「13」から「16」に増えたものの、毎回必ずと言っていいほど“死の組”が生まれ、FIFAランキング上位の国でも予選敗退を強いられる。

今大会予選でもオランダ代表(7位)がポーランド代表(35位)と、スペイン代表(3位)がトルコ代表(28位)と同組となることが既に決定している。W杯優勝4回を誇るイタリア代表ですら、前々回、前回と2大会連続で本大会出場を逃しているのだ。その苛烈さは、余裕しゃくしゃくで日本代表が本大会出場を決めたアジア予選とは対照的で、なんだか申し訳ない気持ちにすらさせられる。

欧州の強豪国同士が対戦するということはすなわち、ポイントの奪い合いをすることに他ならず、その結果として日本が相対的にランキングを下げることに繋がる。日本より上の国がW杯本大会出場を決めればポイントに差をつけられ、日本よりわずかに下のスイス代表(20位)、デンマーク代表(21位)、オーストリア代表(22位)あたりが予選を突破すれば、FIFAランキングでも日本を追い抜いていく可能性は高いだろう。


日本代表 写真:Getty Images

意識すべきは欧州予選だけではない

日本代表がW杯本大会の組み合わせでポット1に入るために自力でやれることは「残り試合全勝」だけだ。それでも足りなければ他力に頼るしかない。

それはランキング上位のフランス代表(2位)、スペイン代表、イングランド代表(4位)、ポルトガル代表(6位)、オランダ代表、ベルギー代表(8位)、イタリア代表(9位)、ドイツ代表(10位)の中で少なくとも2か国が本大会出場を逃すという番狂わせが起きることを意味する。

逆にこれらの国が順当に本大会出場を決め、前述した日本よりランク下位の国もW杯出場となれば、逆にポッド3転落という事態に陥ることも十分にあり得るだろう。

カタールW杯でポッド3に入った日本代表は、スペイン代表(ポッド1)、ドイツ代表(ポッド2)と同組に入る不運に見舞われた。しかしその2チームを破り、逆にポッド4だったコスタリカ代表に不覚を取った。この結果から「ポッド分けやFIFAランキングなど関係ない」という声もあろうが、もう一度この組み合わせでグループリーグの1位突破を再現できるかと言えば、かなり困難だろう。

加えて、日本代表が意識すべきは欧州予選だけではない。開催国のアメリカ代表(16位)やメキシコ代表(19位)、アフリカ予選を戦うモロッコ代表やセネガル代表(17位)。現在行われている南米予選では前回王者のアルゼンチン代表(1位)が本大会出場を決めた一方で、エクアドル代表(24位)やパラグアイ代表(53位)が健闘を見せており、「6.5枠」内の順位につけている。

現実的に、日本代表がポッド1に入るためには「人事を尽くして天命を待つ」という言葉に尽きる。しかし仮にそれが叶わなかったとしても、早々にW杯本大会出場を決めてしまったことで目標を見失いがちだったところに、もう一度モチベーションを与える要素となっている点では大きい。


ポット1以外でW杯を制した国は未だにない

なお「ポット」という言い方になったのは1998年のフランスW杯からで、それ以前は「シード国」と言われていた。ポット1(シード国)以外でW杯を制した国は未だにない。日本代表が世界一を目指す上で、ポット1という道は必ず通らなければならず、まずはそこを目指すのは当然のことだろう。

バーレーン戦後、久保は「とりあえずホッとした」と正直な感想を口にしたが、彼を含めた代表イレブンの志はまだまだこんなものではないだろう。カタールW杯以上のインパクトを残すための戦いは既に始まっている。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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