その他 女子サッカー

史上最多観客動員を記録したWEリーグ。問題点と欧州女子ブーム比較

バルセロナ・フェメニ 写真:Getty Images

欧州女子サッカーブームと比較

一方で、欧州では女子サッカーブームが起きている。2021/22シーズンUEFA女子チャンピオンズリーグ(UWCL)でのバルセロナ対レアル・マドリードの「エル・クラシコ・フェメニーノ」では、バルセロナのホームスタジアム、カンプノウに9万1,553人が集まり、女子サッカーの観客動員数世界記録を樹立した。

他にも、ラ・リーガ女子(スペイン)、イングランド女子スーパーリーグ(WSL)も活況を呈している。女子サッカー界ではこれまで、米国代表や米国女子サッカーリーグ(NWSL)が世界をリードしていたが、ここにきて欧州が追い付き追い越そうとしている。

世界的に注目されるバルサ対レアルを例に挙げれば、これが男子の試合だったらスタジアム内外は殺気立った雰囲気となる。アウェイのサポーターに対しては、最寄りの駅を使わないことや、タクシーでの来場を呼び掛けられ、スタジアム入場までの導線も完全に隔離されているほどだ。

女子サッカーの試合となれば全く雰囲気は異なり、女性や子どもでも恐怖を感じずに観戦できる環境となる。同じクラブの対戦であるにも関わらず、男子か女子かの違いだけで、客層がガラリと変わるのだ。発煙筒が焚かれることもなければ、聞くに堪えないヤジが飛ぶこともない。その事実だけでも、スタジアムに行きたくとも行けなかった女性や子どもが観戦に訪れる動機となる。

日本の場合、Jリーグの会場の雰囲気が殺気立つことは非常に少なく、女性や子どもでも安心して観戦できる環境が既に整っている。それは素晴らしいことなのだが、一方で、あえてWEリーグを観戦にスタジアムを訪れる動機が1つ消えることにも繋がっていると言えよう。

日頃からJリーグのスピード感に慣れてしまっているファンが、プロとはいえ女子サッカーを観戦したとしても物足りなさを感じても致し方ないだろう。JリーグのファンをWEリーグに引き込むことの難しさが、そこにはある。


浦和レッズレディース 写真:Getty Images

SVリーグや女子プロレスも参考に

2024/25シーズンからはAFC女子チャンピオンズリーグが始まり、昨季のWEリーグ王者の浦和が参戦している。しかし、グループステージはベトナム(ホーチミン)での集中開催で、グループ首位通過した浦和の初戦、オディシャFC(インド)との一戦(トンニャット・スタジアム)では17-0という記録的圧勝を収めるも観客数が168人という有り様では、女子欧州CLのような競争力を帯びたリーグ戦となるまでには相当の時間がかかりそうだ。

WEリーグの大半のクラブがJリーグの女子部門であることから、パラダイムシフトは困難を伴うだろうが、まず前提として「Jリーグファン」が「WEリーグファン」となることを諦め、全く別のアプローチから集客する方法を見付けなければならないだろう。

昨2024年に創立されたバレーボールのSVリーグの観客動員数比では、男子を10とすると女子は7~8といったところ。もちろん会場キャパシティーは段違いではあるが、女子は健闘しているといっていいだろう。競技そのものの人気に加え、選手個人への「カッコイイ」「カワイイ」といった人気を動員に生かしている点では参考になるのではないだろうか。

また、スポーツというカテゴリーに加えることに抵抗を感じる人もいるだろうが、プロレスも参考にできる。同じ格闘技であるにも関わらず、これほど男女で客層が違うスポーツ興行はないからだ。

現在、女子プロレスは幾度の壁を乗り越えながら再ブームを巻き起こしている。その中心にいるのが次々とアイドルレスラーを生み、実際、元グラビアアイドルの愛川ゆず季氏をリングデビューさせた女子プロレス団体「スターダム」だ。彼女たちに憧れ、応援する層は主に中高生を含む若い女性である。

試合内容を損なうことなく、選手を“アイドル化”させ、ショーアップする手法は賛否両論を呼ぶだろう。競技性では男子のJリーグに敵わず、メディアへの露出も期待できないのでなれば、SVリーグや女子プロレスを参考に、新たな客層の掘り起こしを図ってみるのも一考に値するのではないだろうか。

ページ 2 / 2

名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

筆者記事一覧