リーグ・アン

レッドブルが本腰を入れたパリFCは、PSGを超える存在となれるか

アントワーヌ・アルノー氏 写真:Getty Images

今2024/25シーズン、フランスのリーグ・ドゥ(2部)で現時点3位につけるパリFC。昨2024年11月に超大口スポンサーがついて注目されている。レッドブル・グループと、フランスでナンバーワン、かつ世界でもトップクラスの財力を誇る大富豪のベルナール・アルノー氏を筆頭とするアルノー一族だ。

パリFCがリーグ・アン(1部)に昇格すれば、来2025/26シーズン30数年ぶりに「パリダービー」が復活することになる。しかもかつては同じクラブだった過去を持つパリ・サンジェルマン(PSG)との“兄弟対決”だ。金持ちクラブ同士の首都決戦はフランスサッカー界に新風を吹き込んでくれそうだ。

ここでは改めてパリFCの歴史を振り返り、大口スポンサーについて、ホームスタジアムについて、パリダービー実現への期待を込めてまとめてみよう。


2024年パリオリンピック 写真:Getty Images

PSGと同一クラブだったパリFC

パリFCの創立は1969年で、同都市の世界的ビッグクラブ、パリ・サンジェルマン(PSG)の1970年よりも早い。この2クラブは、1972年までは同一クラブであり、分裂したという歴史がある。

世界を代表する大都市のパリには、1960年代ラシン・パリ、レッドスターFC93、スタッド・フランセ、アスレチック・パリなどのクラブがあった。しかし、1969年には降格や解散などでリーグ・アン所属のクラブがなくなり、“花の都”パリに見合うサッカークラブがないことを残念な思いでいた政財界の大物が立ち上がり、創設されたクラブがパリFCだ。そして翌年にスタッド・サンジェルマンと合併してPSGとなった。

PSGは1971/72シーズンにリーグ・アン昇格を決めたものの、スタッド・サンジェルマンがパリ西部にある近郊都市のサンジェルマン・アン・レイを本拠地としていたことから、パリ市が資金援助を渋った。結果、クラブや選手がパリFCとして存続する一方、PSGはアマチュアクラブとして3部リーグから再スタート。袂を分つこととなった。

その後、PSGはパリ社交界や、フランスを代表する俳優のジャン=ポール・ベルモンドなどパリ出身の著名人の出資を受け急成長。クラブ分裂からおよそ10年後の1981/82シーズンにはクープ・ドゥ・フランス(フランス杯)で主要タイトル初獲得。1985/86シーズンにはリーグ・アンを初めて制した。

テレビ局の『Canal+』がPSGを買収し、元ブラジル代表MFライー、元フランス代表FWユーリ・ジョルカエフ、鹿島アントラーズでも活躍した元ブラジル代表MFレオナルド、元フランス代表FWニコラ・アネルカ、元ブラジル代表FWロナウジーニョといったビッグネームを次々と獲得。リーグ優勝8回に加え、1995/96シーズンにはUEFAカップウィナーズカップ(現在UEFAヨーロッパリーグに吸収)で優勝。

一躍欧州におけるビッグクラブの仲間入りを果たしたPSGは、2011年には、カタール投資庁の子会社「カタール・スポーツ・インベストメント」が買収し、世界トップクラスの資金力を誇っている。

一方、パリFCは1973年にリーグ・ドゥに降格。PSGに反比例するかのように凋落の一途を辿り、1983年にはクラブが再分割され、一時は5部にまで降格した。


RB大宮アルディージャ 写真:Getty Images

レッドブル・グループとアルノー一族

2010年代になって少しずつ盛り返し、2017/18シーズンにはリーグ・ドゥにまで復帰したパリFC。昨年、大きな味方が現れる。その1つが、当時J3の大宮アルディージャを買収し、「RB大宮アルディージャ」と改称させ、2025シーズンのJ2においてJ1昇格の有力候補の1つに押し上げたレッドブル・グループだ。

さらに、PSGの中東資本を凌ぐ大口スポンサーとして、大富豪のベルナール・アルノー氏を筆頭とするアルノー一族がついた。アルノー一族は、ルイ・ヴィトン、クリスチャン・ディオール、モエ・エ・シャンドン、ヘネシーなど数々のラグジュアリーブランドを総括するLVMHグループのオーナーで、その総資産は日本円で34兆円を超えるといわれている。これは、テスラCEOのイーロン・マスク氏、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏、フェイスブック社(現Meta社)の創業者マーク・ザッカーバーグ氏をも超える天文学的数字だ。

かくして、アルノー一族のグループ企業アガシュ・スポーツが52.4%、レッドブル・グループが10.6%の株を取得し、アルノー一族がパリFCの筆頭株主となった。これまで筆頭オーナーだったピエール・フェラッチ会長も引き続き30%程度の株を保有しそのまま会長職を継続しているが、2026/27シーズン限りでの引退を公言していることから、いずれはベルナール・アルノー氏の息子のアントワーヌ・アルノー氏が会長に就任することが確実視されている。

ベルナール・アルノー氏は大のサッカー好きとして知られ、過去にはセリエAのミランの買収に乗り出したこともあったようだ。パリFCの実務に携わるのは息子のアントワーヌ氏で、彼はPSGのサポーターであることを公言している。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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