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スポーツベッティングの日本上陸を阻んでいるものは。オンラインカジノ問題

欧州サッカー連盟(UEFA)写真:Getty Images

ギャンブルとスポーツの曖昧な境

欧州サッカー界では、スポーツベッティングも含んだオンラインカジノ会社が胸スポンサーに付く事例が頻出し、あまりにも増えすぎた。UEFA(欧州サッカー連盟)は主催大会(チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグ、ヨーロッパカンファレンスリーグ)でのオンラインカジノ会社のユニフォームスポンサー掲出を禁止し、結果、胸スポンサーが空いたままのチーム同士が対戦するという奇妙な現象も起きている。

ちなみに、G7(日本、フランス、米国、英国、ドイツ、イタリア、カナダ)でスポーツベッティングを解禁していないのは日本だけだ。

この議論で必ず登場するのが「ギャンブル依存症」の問題だが、そこで既存のギャンブルが俎上に乗せられることは少ない。そもそも、既に日本はギャンブル大国だ。さらに寺銭(堂元の取り分)の行き先が国や地方公共団体であれば合法、そうでなければ違法という分かりやすい前提なら理解できるが、パチンコ・スロット業界は例外とされている。法の立て付けに一貫性がない。これではオンラインカジノやスポーツベッティングを禁じる法的根拠も薄くなる。検察庁が裁判に持ち込ませたくない理由もこの点にあると思われる。

テレビCMを見れば分かるが、競輪もボートレースもやたらと「スポーツ」という言葉を登場させ、それは鼻に付くほどだ。筆者もこれらのギャンブルをひと通り経験しているが、選手をアスリートとして見たことはない。所詮はギャンブルの駒で、それ以上でもそれ以下でもなくなる。

また、1952年に誕生して以来半世紀に渡り親しまれた「競艇」という言葉は、2010年に日本モーターボート競走会からの要請で「ボートレース」となり、「競艇選手」も「ボートレーサー」とするようメディアに通達された。横文字にすれば「スポーツ」として認知されるとでも思ったのだろうか。百歩譲って、五輪競技でもあるケイリンをスポーツとして認めたとしても、日本発祥にも関わらず日本人選手が五輪で金メダルを獲得したことはない。賞金が懸かっていない状況では実力を発揮できないということか。


やるべきことは制度化では?

利権にまみれた既存のギャンブルはもっぱら高齢男性がメインターゲットで、ネットの普及で売上が盛り返したものの、いずれ頭打ちになることは必定だ。翻って、スマホゲームの延長線上にあるような気軽さで楽しめるオンラインカジノは、いくら違法と広報したところでイタチごっことなり、消えはしないだろう。そこに需要があるのだから、自由経済下では至って自然な現象とは言えないだろうか。

政府が「違法」と叫び続けても効果がないとなれば、やるべきことは1つしかない。オンラインカジノやスポーツベッティングを「適法」と認め、監督官庁を定め、国内での会社設立を促した上でしっかりと税金を取れば良いのだ。これが実現すれば、岡田氏の言うところの「お金が海外に流出」することを防ぐことが出来るのではないだろうか。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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