プレミアリーグ マンチェスター・シティ

無類の得点量産マシン。アーリング・ハーランドのプレースタイル

アーリング・ハーランド 写真:Getty Images

天下無敵の空中戦

ハーランドと空中戦でまともに競り合ったらまず勝ち目がないため、相手選手は身体を当てたり、あの手この手で勝機を見出そうとする。ファウルになるかならないかのギリギリのチャージだが、その際に長身だとバランスを崩しやすい。しかし、ハーランドはボディバランスがすこぶる良く、簡単に崩れ落ちるようなことはまずない。

献身的な守備

前線からの守備のプレスも怠らない。大柄な選手は、スタミナがなくても許される場合がある。しかし、ハーランドは試合終盤になっても足が止まることはなく、息が切れて仕事をサボるようなことはまずない。飛び抜けた得点力がありながら、なおかつ守備でも大きく貢献しているのだ。


アーリング・ハーランド 写真:Getty Images

代表ではチャンスメーカー、シティではストライカー

ノルウェー代表でのハーランドには、ゴール前で相手に背を向けて、足元あるいは頭で落としてポストプレーによるアシスト、もしくは振り向きながら突破してシュートというシーンがよく見られる。また、スピードに乗ったドリブルで中央突破もみせる。

欧州の中堅国であるノルウェー代表では、ハーランドは独力で強引なプレーをする傾向がある。少々無理をしてでも、自分で行ったほうが得点機につながりやすいからだ。

一方で、ポゼッション戦術を真髄とするジョゼップ・グアルディオラ監督が率いるマンチェスター・シティでは趣が異なる。シティはビルドアップに長けタレントも揃っており、チャンスメイクは周囲の選手に任せられる状況にある。したがってハーランドは最高のお膳立てにより、比較的余裕がある状態でボールを受けてシュートを打てる。

シティのハーランドはポストプレーでチャンスメーカーになるより、ストライカーとして得点を狙うような動きが多い。

どちらにしても高い得点力を証明している。代表でもクラブでも概ね1試合で1得点かそれ以上を決めている。これは、驚異的な数字だ。20代のうちはこのプレースタイルを維持するに違いない。仮に年齢とともに走力が落ちても、長身とゴール前の駆け引きのセンスだけでも、チームにとっての存在価値は大きいものだ。

大きな怪我をせずに意欲を持ち続ければ、長い間トップレベルで活躍することが可能だろう。

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名前Takuya Nagata
趣味:世界探訪、社会開発、モノづくり
好きなチーム:空想のチームや新種のスポーツが頭の中を駆け巡る。世界初のコンペティティブな混合フットボールPropulsive Football(PROBALL)を発表。

若干14歳で監督デビュー。ブラジルCFZ do Rioに留学し、日本有数のクラブの一員として欧州遠征。イングランドの大学の選手兼監督やスペインクラブのコーチ等を歴任。アカデミックな本から小説まで執筆するサッカー作家。必殺技は“捨て身”のカニばさみタックルで、ついたあだ名が「ナガタックル」。2010年W杯に向けて前線からのプレスを完成させようとしていた日本代表に対して「守備を厚くすべき」と論陣を張る。南アでフタを開けると岡田ジャパンは本職がMFの本田圭佑をワントップにすげて守りを固める戦術の大転換でベスト16に進出し、予言が的中。

宇宙カルチャー&エンターテインメント『The Space-Timer 0』、アートナレッジハブ『The Minimalist』等を企画。ラグビーもプレーし広くフットボールを比較研究。

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