Jリーグ

J2リーグ2025シーズン新監督4名の期待度

FC今治 サポーター 写真:Getty Images

FC今治:倉石圭二監督

期待度:★★☆☆☆

ついにJ2の舞台にまで上り詰めたFC今治。2012年に愛媛FCから独立する形で発足して四国リーグに参戦し、2014年に元日本代表監督の岡田武史氏がオーナーに就いてから11年が経った。昨2024シーズン、J3リーグ2位で初昇格に導いた功労者の服部年宏監督を退任させる驚きの人事を発表。新監督に就任したのは、V・ファーレン長崎のコーチを務めていた倉石圭二監督だ。

倉石監督は、生まれ故郷の宮崎日本大学高校で指導者キャリアをスタートさせ、当時JFLのテゲバジャーロ宮崎(2018-2020)での監督経験はあるものの、S級コーチライセンスを取得したのは横浜FCのコーチを務めていた2023年。当然ながら、Jクラブの監督は初めてとなる。実績らしい実績は、長崎のコーチとして昨シーズンJ2で3位に食い込み、プレーオフに進出(準決勝でベガルタ仙台に敗退)したことくらいだろうか。

選手としても、元日本代表FW大久保嘉人(2021年引退)を擁し高校3冠(インターハイ・国体・全国高校サッカー)を果たした長崎県立国見高校を経て、専修大学に進んだもののJ入りは果たせず。JFLと九州リーグを行ったり来たりしていたホンダロックSC(現ミネベアミツミFC)での5シーズン(2005-2009)の実績しかない。

矢野将文社長はこの人事について「J1を目指すため」と説明したが、逆の見方をすれば「服部監督では無理」と言っているようなものだ。後任が新米監督だったことも含め、服部監督はプライドを大いに傷付けられたことだろう。すぐさま古巣のジュビロ磐田に請われ、ジュニアユースの監督に就いたことがせめてもの救いだ。

今治は、2017年のJFL昇格以来、毎年のように指揮官交代を繰り返しており、9シーズン目で倉石監督が10人目となる。2019シーズンもJFL3位でJ3昇格に導いた小野剛元監督を退任させ、スペイン人のリュイス・プラナグマ・ラモス監督(現エミレーツ・クラブ監督)を招聘している。

岡田オーナーと矢野社長が何を求めて倉石監督を抜擢したのかは不明のままだ。FWマルクス・ヴィニシウスの残留を成功させ、FC岐阜からFW藤岡浩介を獲得し、昨シーズンJ3得点王の2人を揃えた(ともに19得点)。この2人の決定力を生かした攻撃サッカーを志向するのだと思われる。

しかしチームが不調に陥ると、会長職にありながら、現場に口出ししていたという岡田オーナー。このクラブで監督を務めるということは、中間管理職的な能力を求められ、結果を出してもクビの恐怖と闘わなければならない。これはなかなか難しい仕事と言っていいだろう。


小菊昭雄監督 写真:Getty Images

サガン鳥栖:小菊昭雄監督

期待度:★★★★☆

サガン鳥栖の小菊昭雄新監督は、兵庫県のサッカーの名門滝川第二高校出身だが、出場機会がほとんどないまま卒業し、愛知学院大学卒業を前にした1998年2月からセレッソ大阪下部組織のコーチにアルバイトとして指導者キャリアをスタートさせた異色の指揮官だ。

3度にわたりC大阪の指揮を執ったレヴィー・クルピ監督(2007-2011、2012-2013、2021)の後任として、コーチから昇格する形でC大阪の監督に就任。当初は“つなぎ”と思われていたものの、ルヴァン杯2年連続準優勝(2021、2022)や、天皇杯4強(2021)と8強(2022)、J1リーグでも1桁順位が続いたことで、3年半もの間その座に就いていたが、昨2024シーズンは不振に終わり勇退となった。

下部組織のコーチのみならず強化部の経験もあり、コーチ時代にはJ2も経験していることから、鳥栖の1年でのJ1復帰に向けては打って付けの人選といえるだろう。また、前監督の木谷公亮氏をヘッドコーチとして残し、昨シーズン限りで引退したOBの藤田直之氏もアシスタントコーチに任命している。

また、実に22人もの選手を移籍や引退で失いながらも、ボタフォゴからブラジル人FWジョーや、レノファ山口からFW酒井宣福、清水エスパルスからMF西澤健太、いわきFCからMF西川潤といった即戦力を補強。2011年以来、14シーズンぶりのJ1へ向け、万全の体制で挑む。

鳥栖は、2022年の川井健太監督就任以来低迷が続き、金明輝元監督(2018-2021)が積み上げた貯金も使い果たした上でJ2に降格してしまった。しかし、この体制ならプレーオフ圏内はおろか自動昇格圏の2位以上も狙えるだろう。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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