Jリーグ 湘南ベルマーレ

湘南ベルマーレの2024シーズンを総括。夏場に築かれた攻撃基盤

大野和成(左)山口智監督(中)鈴木章斗(右)写真:Getty Images

2024明治安田J1リーグを15位で終え、来年もJ1の舞台に立つことが決まっている湘南ベルマーレ。一時は同リーグ最下位に沈み、J2リーグへの降格危機に瀕したものの、7月6日の第22節浦和レッズ戦での逆転勝利(3-2)から公式戦4連勝を飾る。8月には当時首位に立っていた町田ゼルビアに1-0で勝利。夏場に勝ち点を稼いだことでJ1残留を手繰り寄せた。

ここでは、2024シーズンにおける湘南の戦いぶりを振り返る。リーグ序盤の不振や夏場の復調について論評するとともに、同クラブが今後向き合うべき問題点にも言及していく。


山口智監督 写真:Getty Images

乏しかった[4-4-2]からの隊形変化

今季序盤、[4-4-2]と[3-1-4-2]の2つの基本布陣を使い分けていた湘南の山口智監督。どちらの布陣でも、GKや最終ラインからパスを回す際(ビルドアップ時)の選手配置が悪く、ゆえに相手チームの最前線からの守備の餌食となるケースが多かった。

特に[4-4-2]の布陣で臨んだ試合の攻撃配置の悪さは顕著で、サイドバックがタッチライン際かつ低い位置(味方センターバックとほぼ同列の位置)でボールを受けることにより、その後のパスコースが無くなる場面がしばしば。サイドバックがここでボールを受けた場合、自身の傍にはタッチラインがあるため、パスコースが必然的に180度方向に限られる。これに加えサイドバックが相手選手の寄せを浴びれば、その後のパスやドリブルの成功率は極めて低くなる。この最たる例が、最終スコア0-2で敗れた第5節セレッソ大阪戦の前半22分のシーンだ。

ここでは基本布陣[4-4-2]の左サイドバックとして先発したDF杉岡大暉(※)が、自陣後方タッチライン際且つ相手サイドハーフ(ウイングFW)の手前に立ってボールを受けてしまっている。これと同時にC大阪MFルーカス・フェルナンデスに縦のパスコースを塞がれた杉岡は味方DFキム・ミンテへのバックパスを選んだが、この軌道が逸れて相手ボールとなり、大ピンチを招いている。[4-4-2]の初期配置からどのように隊形変化し、相手を撹乱するのか。シーズン序盤はこの点が突き詰められておらず、ゆえに湘南のビルドアップは淀んだ。

(※)7月に町田ゼルビアへ期限付き移籍


大野和成 写真:Getty Images

[3-1-4-2]にも問題が

[3-1-4-2]で臨んだ試合でも、ビルドアップ時に3センターバックの立ち位置が横に開きすぎることで、パスコースが無くなる問題が発生。この典型例が、最終スコア1-2で敗れた第17節ガンバ大阪戦の1失点目(前半29分)の場面だ。

湘南GKソン・ボムグンがペナルティエリアでボールを保持したこの場面では、3センターバックの左右を務めたDF大野和成とMF鈴木雄斗が、タッチライン際へ開きすぎてしまっている。ゆえに自陣後方タッチライン際に立った右センターバックの鈴木雄斗が、G大阪のFWウェルトン(左サイドハーフ)に捕捉されてしまった。

これに加え、3センターバック中央を務めたMF鈴木淳之介と左センターバック大野の距離も開きすぎたため、ボールを失った直後の守備がしにくい状態に。GKソンの縦パスをG大阪MF鈴木徳真にカットされたうえ、同クラブFW山下諒也にラストパスを繰り出されると、これを受けたFW宇佐美貴史への鈴木淳之介の寄せが間に合わず。最終的には宇佐美に先制ゴールを奪われた。

ビルドアップの際、3センターバックの立ち位置が横に開きすぎる。もしくはウイングバックが自陣後方タッチライン際でボールを受けることで、相手チームの最前線からの守備(ハイプレス)の餌食となる。これらの問題は2023シーズンにも起きており、同年第19節の横浜F・マリノス戦における湘南の2失点目も、この日左ウイングバックを務めたMF中野嘉大(※)が先述の立ち位置でボールを受け、相手DF松原健のプレスを浴びたことで喫したものだった。

湘南は2023シーズンの第7節から第21節の15試合で5分け10敗と、1勝も挙げられず。そして2024シーズン開幕節から第11節までの計11試合でわずか1勝と、2年続けて極度の成績不振に陥っている。しかもこの原因が2シーズンともビルドアップ時の攻撃配置の悪さであり、これを踏まえると湘南は同じ過ちを繰り返したと論評せざるを得ない。戦術修正に要する時間や期間を、いかに短縮するか。湘南がJ1残留争いの常連から脱却し、上位進出を果たすために向き合うべきはまさにこの点だ。

(※)2024年1月に横浜FCへ期限付き移籍

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名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

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