後半、変化を加えたシティ
後半、シティはストーンズに変え、DFカイル・ウォーカーを投入する。最終ラインの並びは左から、リコ・ルイス、DFヨシュコ・グヴァルディオール、DFマヌエル・アカンジ、ウォーカーになった。
ウォーカー投入の理由の1つは、前述した問題に関するものだった。失点シーンでは、コバチッチがロジャーズを見ていたのに対して、ウォーカーがその役割を担うようになったわけである。中央で穴になりやすいセンターバックではなく、サイドバックをその役割に利用するのは合理的であると言える。
MFティーレマンスをめぐる攻防
ただ、シティにとってその後2つの問題が起こった。1つは、ビラがシティのプレスの回避方法に気づいたこと(利用し始めたこと)だ。
シティの3トップはビラの最終ラインに対して、右サイドハーフのMFベルナルド・シウバが外側から圧力をかける方法を取っていた。これはビラのビルドアップで重要な役割を果たすDFパウ・トーレスの配給を制限するという狙いがあったはずだ。しかし、右サイドハーフが外側(サイドバックからセンターバック)から圧力をかけるということは、1度センターバックまでプレスするとサイドバックはフリーになるということである。
後半はじまってすぐ、ビラはGKマルティネスから、ディニュへのパスが増え、ボールを保持しやすくなった。さらに言えば、このフリーのディニュに対して、対応しなければならないのがウォーカーだった。それは、ロジャーズをコバチッチが見なければいけないことを意味していた。そして、それはティーレマンスをどうするのかという問題につながる。
その問題がよく表れたのが、後半47分のシーンだと言える。マルティネスからのボールを受けるディニュ。そこに対応するウォーカー。それと同時にロジャーズに対応するコバチッチ。
ディニュからのボールをロジャーズがコントロールしている時、既にティーレマンスは最終ラインと中盤の間でフリーになっている。ロジャーズがトーレスまでボールを戻したため、そのタイミングでティーレマンスに渡ることはなかったが、トーレスがダイレクトでティーレマンスにパスを通し、ビラはキャッシュのシュートまでつながるチャンスを作る。
もちろん、ティーレマンスの反転する技術、ワンタッチで敵をかわす能力、スルーパスの技術、それらすべてが重要だったことは言うまでもない。
シティすぐに対応もビラ2点目
その後すぐ、シティはプレスの方法を変える。フォーデンを前線まであげ【4-4-2】のようにプレスをかけ始める。ビラのダブルボランチには、シティもダブルボランチを当て、問題の2人(ロジャーズ、ティーレマンス)にはウォーカーとリコ・ルイスを当てるようにした。
シティにとって2つ目の問題はこのプレスのかけ方によって、トーレスが解放されたことと、その先にロジャーズがいたことだ。ロジャーズがウォーカー、コバチッチを引き倒して進み決めたビラ2点目は「誰が対応するか?」という問題そのものを無為に期してしまうほどの活躍だった。
絶好調のウォーカーであればまた違った結果になっていたかもしれないが、少なくともこの日のロジャーズは2、3人でも止めることができない存在だった。
終始”怖くない”シティ
後半のシティは前半よりもさらに勢いをなくし、グリーリッシュも、後半から入ったFWサヴィーニョ、FWジェレミー・ドクも脅威にはなりえなかった。
唯一シュートを放っていたのはフォーデンだけで、ロスタイムにそのフォーデンが1得点を返すが、ビラのディニュが不運にもボールの上にのってしまったために取れた得点だった。
もちろん相手のミスの結果だろうが、どんなゴールもゲーム上は同じ価値を持つ。ただ、問題が解決したわけでもなく、問題を解決してくれるわけでもない1点だった。
勝敗以上に正反対な2チーム
ビラに関しては、シティに対する勝利は今後の好転のきっかけになりえると言えるだろう。ロジャーズのコンディション、デュランとの関係性の良さ。トップ下、ティーレマンスの可能性。例えば、昨2023/24シーズンほどFWレオン・ベイリーのコンディションが上がってこないことで停滞していた右サイドの攻撃に改善が見られるかもしれない。
逆にシティに関しては、深みから抜け出せなさそうである。「盛者必衰」という言葉があるように、いつかは絶対王者であるシティにも、こういう日が来ることは誰もが分かっていた。様々なネガティブな言説がシティには向けられてきたがその強さだけは皆が認めていたところだろう。特に、エンジンがかかったシーズン終盤は無類の強さを誇った。
しかし、”必衰”の時は思ったよりもあっけなく、そして無常に進んでいく。世界最高のジョゼップ・グアルディオラ監督に率いられた世界最強のチーム。彼らの時代の終わりが刻一刻と現実味を帯びてきている。何か改善策を見つけられるだろうか。
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