12月21日行われたプレミアリーグ第17節マンチェスター・シティ対アストン・ビラは、調子が上がらない両者の復調をかけた対戦だった。また、どちらにとってもヨーロッパ大会出場権争いに留まるためには落としたくはない1戦でもあった。
ここ最近の成績はよろしくない。シティについては言うまでもないが、ビラも3連勝を記録した後にノッティンガム・フォレスト戦(12月15日1-2)で劇的な負けを経験し不安がよぎっていた。3連勝の前、7戦勝ちなしの期間があったからだ。
結果は、2-1でビラの勝利。試合自体はローテンポの時間帯がありつつも、いくつかのポイントにおいて興味深い攻防が見られた面白い試合だった。その内容をビラ視点を中心に振り返る。
いつもとほんの少し違う人選が機能したビラ
ビラのスターティングメンバーはいつもとほんの少し違っていた。布陣はいつもの【4-2-3-1】だったが、ダブルボランチにMFブバカル・カマラとMFアマドゥ・オナナ、トップ下にMFユーリ・ティーレマンス。このチョイスは今2024/25シーズン初めてで、基本的には、ダブルボランチにはティーレマンスとオナナもしくはカマラが選ばれていた。
ティーレマンスがより攻撃的な役割を担う選手であるのに対して、カマラとオナナはより守備的な役割を担う選手だ。これまでは、バランスが良いダブルボランチだったのに対し、この試合では守備的な2人を並べてきたわけである。
シティの攻撃に対してか、他のポジションとの兼ね合いか、それともその両方か。いずれにせよ、結果的にこの人選は非常によく機能したと言えるだろう。
実はシティもビラも一緒だった布陣
シティもビラも当日の基本布陣は【4-2-3-1】。さらに、ボールを持つときの布陣も大まかには同じ【3-2-5】だった。シティは右サイドバックのDFリコ・ルイスが中盤に入り、MFマテオ・コバチッチとダブルボランチを形成。元々、コバチッチの横にいたMFイルカイ・ギュンドアンは一列上がり、トップ下FWフィル・フォーデンの横にあがった。
一方で、ビラは左サイドバックのDFリュカ・ディニュが最前線のラインまで上がり、左サイドハーフのFWモーガン・ロジャーズが内側に入ることで、【3-2-5】を形成した。
シティが保持しつつ攻撃はいまいちの前半
試合前半はシティがボールを握る展開に。前半12分の段階でのポゼッションはシティが75%に対して、ビラは25%。大方の予想通り保持に関してはシティに軍配が上がった。ただ、ボールを保持していても、シティの攻撃はいまいちというのも、大方の予想通りだった。
前半を通してビラにとって脅威になりえたのは、右サイドからコンビネーションによってペナルティエリアに侵入したFWフォーデンもしくは、サイドチェンジによって1対1の状況が多かった左サイドハーフのFWジャック・グリーリッシュだけだ。
フォーデンに関してはそもそも1、2回しかチャンスがなく、グリーリッシュに関しても、対峙するDFマティ・キャッシュとの勝負においてのみであり、その後のクロス、シュートのクオリティを欠いた。
ビラの強固な守備がはまる
試合結果の要因は、シティが絶不調のためだけでなく、ビラの守備がはまったからというのもあるはずだ。【3-2-5】の布陣で攻めるシティ。対するビラはティーレマンスを前線に挙げた【4-4-2】でブロックを作った。
ビルドアップ時点では、シティの3センターバックと2ボランチ(5人)に対して、ビラのティーレマンスと3トップ(4人)では数的な不利であり、自陣に追い込まれることになる。ただ、ビラは追い込まれた後、自陣でブロックを形成してからはほとんど攻撃を通すことはなかった。
前述したダブルボランチはこの点において大きな効力を発揮した。シティの攻撃において重要な役割を果たすトップ下、フォーデンとギュンドアン。この2人にビラは守備的なダブルボランチ(カマラ、オナナ)をマンマークのような形で当てる。
彼らは必要に応じて最終ラインに戻ることもあったため、ビラのブロックは事実上2ラインになることもあった。そしてそのスペースを埋めるため、10メートルほどの非常にコンパクトな布陣を形成することさえした。
狙いすまされたビラの1点目
ビラの1点目は非常にダイレクトで洗練されたものに見えた。GKエミリアーノ・マルティネスから、ティーレマンス、さらにロジャーズ、そして最後にFWジョン・デュラン。自ゴールから相手のゴールまで、たった3つのパスで到達した。
【4-3-3】のままプレスをかけるシティ。3トップでディフェンスラインに圧力をかけ、ビラのダブルボランチには、ギュンドアンとフォーデンがマークについた。シティのインサイドハーフ2人が深くまで、ダブルボランチに食いついた後ろには、ぽっかりとスペースが空いた。そこで受けたティーレマンスが反転し、ロジャーズにスルーパスを出した時点でほとんど勝負はついていた。
ティーレマンスに対して、シティのセンターバックDFジョン・ストーンズがカバーに出るが距離が空きすぎており、止める事はできなかった。その位置を守れるアンカーのコバチッチは内側に入ってくるロジャーズを見ていた。
ビラ【3-2-5】のメリット
ビラの1点目は【3-2-5】の布陣のメリットがそのまま出た得点でもある。ビラを見ると、ダブルボランチとトップ下のティーレマンス、ロジャーズは四角形を形成する。これに対して、シティはフォーデン、ギュンドアン、コバチッチの3人の中盤で対処することになる。
余った1人をフリーにするわけにもいかないので、センターバックが出てこざるを得なくなるシティ。しかし、今回のようにスペースが広いとセンターバックがカバーをするのは難しく、また食いつきすぎると最終ラインに穴をあけることになってしまう。
ただ、抜け出したロジャーズに対する、リコ・ルイスやコバチチッチの対応が軽すぎたのもまた問題だったろう。
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