高校サッカー

大津高校は「ユース年代日本一」にふさわしいのか。不祥事続発を考察

大津高校 写真:Getty Images

12月15日、埼玉スタジアムで高円宮杯JFA・U-18サッカープレミアリーグファイナルが行われ、WEST王者の熊本県立大津高校がEAST王者の横浜FCユースを3-0で破り、初優勝を果たした。

大津高の勝利によって、ファイナルが東西王者による一発勝負となった2011年以降(2020年、2021年は新型コロナにより中止)、EAST王者とWEST王者の戦績は6勝6敗に。高体連チームの優勝は、流通経済大学付属柏高校(2013)、青森山田高校(2016、2019、2023)に続く3校目で、公立高校の優勝は史上初の“快挙”だ。さらに大津高は熊本県代表として、12月28日に開幕する全国高校サッカー選手権への出場を決めており、2021年の第100回大会の準優勝(優勝は青森山田)を超える、悲願の日本一を目指すことになる。

大津高は全校生徒約800人、うち男子生徒数381人に対して、その半数近い185人ものサッカー部員を抱える大所帯だ。高円宮杯ファイナルのスタンドも、大津側応援席はベンチ入り出来ず応援に回った部員が埋め、その数は横浜FCサポーターが集ったにも関わらず、横浜FC側を上回るほどだった。

そんな大津高サッカー部では、2024年いくつかの不祥事が明らかになった。それらの詳細や対応の裏側について考察したい。


山城朋大監督 写真:Getty Images

大津高サッカー部で起こった問題

大津高サッカー部といえば今年11月、2022年1月に当時2年生の部員2人が強要罪に問われた。全国高校サッカーの応援のための宿泊先で、当時1年生だった男子部員に、「お前、あだな言っとるやろ」「あだ名言ったんだけん、土下座するのが普通やろ」「全裸なれよ」「土下座せろよ」と要求。言う事を聞かなければ、危害を加えることをほのめかして怖がらせ、全裸で土下座をさせたという。

熊本地裁での罪状認否で、被告の元部員の1人は「発言は一切言っていないし、要求もしていない」、もう1人も「全裸と土下座は強要していない」と発言。2人の弁護人は「共謀した事実も、要求した事実もない」と、無罪を主張している。

検察側は冒頭陳述で、当時サッカー部には約160人の部員がおり、上級生には下級生に対し一発芸をさせたり、容姿に関連した悪意あるあだ名を付けたりするなど、理不尽な要求をする風潮があったと指摘。全裸で土下座した場面は2年生がスマホで撮影していたが、被害者とは別の1年生の抗議で削除したことも明らかにしている。

この問題では、熊本県教育委員会も「いじめ防止対策推進法」に基づいた重大事態と認定。熊本県警も2人を書類送検し、熊本地検が在宅起訴した。しかし事件が表面化した当初、学校側は第三者委員会を設置したものの「サッカー部の中で起こった事案で、学校としてはその生徒たちの活動に制約をかける考えはない」とコメントし、責任逃れに徹した。

周囲からの反発を受け、平岡和徳総監督は自粛、山城朋大監督は一時的に“辞任”という形で指導を離れ活動を休止。しかしサッカー部の活動も2週間足らずで活動再開し、“晴れて”全国高校サッカーへの出場を決めた。そして山城監督もたったの2か月で監督に復帰している。

記者会見の場で同校の高野寛美校長は「今回のいじめの問題がすべて解決しているとは思っていない。大変、重く受け止めていることを踏まえて大人が責任を取らせてもらい、指導の自粛を決定した」と説明したが、その言葉は説得力に欠く。なぜなら、大津高サッカー部が問題を起こしたのは、これが初めてではないからだ。

今年5月には、サッカー部員を含む複数の生徒が喫煙や飲酒などをしていたことが明らかになった。同校によると、学校に対し「生徒が飲酒や喫煙をし、パチンコ店に出入りしているのではないか」と情報が寄せられ学校側が調査したところ、サッカー部員ら約10人の生徒が、飲酒や喫煙、パチンコ店への出入りを認めた。

しかしここでも学校側は、「今回の件は、重く受け止めている。今後、生活習慣など指導を行い、信頼できる人材の育成に努める」とコメントしながらも、教育委員会への報告のみで問題を終わらせ、インターハイを控えたサッカー部の活動について、「不祥事を起こした部員は(飲酒・喫煙・パチンコの)メンバーに入っていない」として、何事もなかったかのようにインターハイに出場した。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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