Jリーグ 川崎フロンターレ

川崎Fが見せた戦術アップデート。山東泰山との再戦を制した要因は【ACL現地取材】

川崎フロンターレ 写真:Getty Images

AFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)2024/25のリーグステージ第6節が、12月2日から4日に各地で行われた。川崎フロンターレは4日、本拠地の等々力陸上競技場にて山東泰山(中国)と対戦。最終スコア4-0で勝利している。

今年2月に行われたACL2023/24のラウンド16で、山東と相見えた川崎。等々力陸上競技場にて行われた同ラウンド第2戦を2-4で落としたうえ、第1戦との合計スコアも5-6に。これにより川崎のラウンド16敗退が決まり、クラブ史上初のアジア制覇の夢が潰えた。

2月に涙を呑んだ本拠地でまたも山東と対戦した川崎は、今回の大勝で見事に雪辱を果たしている。2月の対戦から川崎は何をアップデートしたのか。ここではこの点を中心に論評するとともに、現地取材で得た川崎の鬼木達監督の試合後コメントも紹介したい。


ACLエリート2024/25 川崎フロンターレvs山東泰山、先発メンバー

今年2月からの成長とは

今年2月の山東との対戦で、ビルドアップ(GKや最終ラインからのパス回し)を試みた際の各選手の立ち位置に問題があった川崎。2月20日のACLラウンド16第2戦の前半8分には、基本布陣[4-1-2-3]のセンターバックを務めたDF大南拓磨が自陣ペナルティエリア付近でボールを受けたものの、DF佐々木旭の攻め上がり開始が早すぎたため大南との距離が延びてしまっている。右サイドバック佐々木へパスを出せなくなった大南は体の向きを変えようとしたが、この動きを山東のMFリー・ユェンイーに読まれボールを奪われると、ここからの速攻をアウェイチームに物にされた。

[4-4-2]の基本布陣で臨んだ今回の対戦ではこの攻撃配置の悪さが改善されており、川崎はマイボールになると3バックへ隊形変化。右からジェジエウ、丸山祐市、三浦颯太の3DFが並ぶ形になっていた。

ボール運搬力が高いジェジエウと三浦を丸山の両脇に並べたことで、川崎は左右どちらからでもビルドアップを円滑に行えるように。特にこの試合では、左サイドバックとして先発した三浦の推進力が際立っており、山東は同選手のボール運搬を止めるための対策を持ち合わせていなかった。


三浦颯太 写真:Getty Images

「彼の推進力は抜群」

鬼木監督は試合後の会見で、筆者の質問に回答。幾度となく自陣からボールを運び、攻撃の起点となっていた三浦のプレーぶりを称えている。

ー三浦選手のパフォーマンスについてお伺いします。彼がビルドアップの時にタッチライン際ではなく、その内側にポジションをとっており、そこからの攻め上がりが効果的だったように見えました。三浦選手をあの位置でビルドアップに関わらせることに、どんな狙いがあったのか。また、監督から三浦選手への評価もお伺いしたいです。

「ビルドアップの安定感を持たせるために、(三浦に)あそこのポジションをとらせています。これはチームのやり方としてそういう形にしています。彼の推進力というのは抜群です。後ろからでもオーバーラップをかけられたりとか、今日の(ボールの)持ち出しとか非常に良いプレーも多かったですし、クロスに行く回数も増えていたので、低い位置からでも何回もやることを今後をやっていけば、彼のストロング(特長)がどんどん出てくるのかなと思います」

2024シーズン序盤はビルドアップ時の三浦の立ち位置が定まらず、それゆえ川崎のパスワークが淀む場面が散見されたものの、同選手がタッチライン際だけでなくその内側でも存在感を示せるようになったことで、同クラブの攻撃のバリエーションが広がっている。これはクラブ史上初のアジア制覇を狙う川崎にとってポジティブな要素だ。

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名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

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