2024年8月、レッドブルによる大宮アルディージャ買収に併せ、チーム呼称に「いよいよ企業名付記解禁か!?」と噂される中、同月30日付けで、全日空のグループ企業であるANA総合研究所から発表された『Jリーグは誰のものか』と題した研究レポートが注目されている。
Jリーグ全体が抱える問題を詳細に至るまで指摘し、「サッカーは文化」などという綺麗事を見事なまでに看破している同レポート。なぜこうしたレポートを、クラブ合併から2002年まで横浜F・マリノスをスポンサードしていた全日空側から出す必要があったのか。
それは2024年4月に発刊された『横浜フリューゲルスはなぜ消滅しなければならなかったのか』(田崎健太氏著・カンゼン社刊)によって、フリューゲルスの運営会社「全日空スポーツ」の放漫経営ぶりがヤリ玉に挙げられたことへの“アンサー”として世に出されたという見立てがなされている。
実に刺激的な内容で、Jリーグが置かれた実情を暴き、ファン・サポーターにとっては耳の痛い真実をこれでもかとばかりに突いている同レポート。ここでは、同レポートがサッカー界に与えるインパクトと、今後の展望について深掘りしたい。
「企業名NG」の背景に穴
まずは冒頭にも触れた企業名の点だ。Jリーグ初代チェアマンの川淵三郎氏は、チーム名については「ホームタウンの地名+愛称」にこだわり、頑として企業名の付記を認めなかった。ヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ)のオーナーだった読売新聞社の渡邉恒雄主筆とのメディアを通じた論争は、創立当初のJを知る人ならば記憶しているだろう。ちなみに川淵氏は「フランチャイズ」という野球由来の概念も拒んだ。
これに対し、レポートでは「ジェフユナイテッドに関してJEFは『JR East Furukawa(JR東日本と古河電工)』の略であるが、チームの名前として見逃された形になった。フリューゲルスもチーム名をAS横浜(ANAと佐藤工業)としておけばそのまま使用できたかも知れず、面白いところだ」と、シニカルに指摘している。
そもそも渡邉氏が企業名をチーム名に含めようとしたのは、仮にクラブが赤字となっても親会社からの補填を「宣伝広告費」として経費計上できるメリットがあったからだ。Jリーグバブルに沸いた創立当初は誰しもがバラ色の未来しか想像できていなかったが、渡邉氏は“アフターバブル”を想定していた点で、先見の明があったと認めざるを得ない。
そして実際、1998年、マスコミによるスクープという形でフリューゲルスとマリノスとの合併交渉が発覚する。出資会社のもう一方の佐藤工業が経営不振のためクラブ運営から撤退し、全日空も単独でのクラブ運営を諦め、マリノス側に合併話を持ち掛けた。おおよそ合併が内定してから川淵チェアマンの耳に入り、選手などの現場組はマスコミ報道によって知ったという有り様だった。
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