ラ・リーガ レアル・マドリード

天下を獲ったモドリッチの頭脳明晰なプレースタイルまとめ

ルカ・モドリッチ 写真:Getty Images

想像力あふれるビジョンで攻撃を構築

モドリッチは小柄なため狭い所でも股抜きするなど細かいパスやボール捌きがうまいが、その瞬間にも遠くが見えていて、狭い所から小さなモーションで急にロングパスを出すことができるのが凄い。ピッチのどこにいてどんな体勢でも、決定的なパスが飛んでくるので相手は安心していられない。

モドリッチはサッカーIQが高く、空間認知能力に優れる。常にピッチ上で何が起こっているのかつぶさに観察し、まるで上空を飛ぶドローンの映像と接続し頭の中でデジタルツインをリアルタイムで更新しているかのような精密さで把握している。俯瞰するように状況を深く理解しているからこそ、プレーのその先の読みが早く的確なのだ。

いつ誰がどこにいるかを分かっているので、パスだけではなくボールを触らずにスルーすることもある。また、ボールを触らずして体の動きや目線で逆をとって相手を交わすこともある。ボール捌きが巧みなら、ボールを触らない動きも巧みだ。


ルカ・モドリッチ 写真:Getty Images

セットプレーのプレースキッカー、ボールの軌道をイメージ

一方、小柄なためゴール前の空中戦で相手と身体をぶつけて競り合うのにはあまり向かない。しかしプレースキッカーとして優れ、しっかりとセットプレーの居場所を見つけている。いつどこにボールを蹴れば、味方選手に合うかというシミュレーションを行い、そこにピンポイントでボールを届ける技術力が伴っている。

モドリッチはプレースキックをした後に、身を乗り出して目でボールを追う。これは、ボールが飛んでいって味方につながる軌道を脳内でイメージしているため、それが体の動きにも表出しているのだ。


ルカ・モドリッチ 写真:Getty Images

研ぎ澄まされた守備の読み

接触プレーにおいては、アメフトのように真正面から体当りしたら不利だが、身体がぶつかる状況になる前にもう勝負を決めているモドリッチ。重要なポイントにいち早く入るため、小柄な外見とは乖離した守備力を発揮する。

駆け引きと読みに優れるため一歩目が早く、インターセプトやタックルに入るタイミングが早い。相手にぶつかる前にもう次の展開が頭にあり、ボールを奪うなり、あわよくばそのまま攻撃に転じる。


ルカ・モドリッチ 写真:Getty Images

中盤のユーティリティプレーヤー

モドリッチの洞察力と状況判断力は天賦の才だろう。中盤のどこでもプレー可能だが小柄なため、ヘディングが多くなるアンカーではなくインサイドMFやサイドMFに配置されることもある。少し前掛かりのポジションのほうが攻撃力が活きるというものだ。

ドリブルよし、パスよし、シュートよし、そして守備よし。ポリバレントなミッドフィルダーということができるだろう。

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名前Takuya Nagata
趣味:世界探訪、社会開発、モノづくり
好きなチーム:空想のチームや新種のスポーツが頭の中を駆け巡る。世界初のコンペティティブな混合フットボールPropulsive Football(PROBALL)を発表。

若干14歳で監督デビュー。ブラジルCFZ do Rioに留学し、日本有数のクラブの一員として欧州遠征。イングランドの大学の選手兼監督やスペインクラブのコーチ等を歴任。アカデミックな本から小説まで執筆するサッカー作家。必殺技は“捨て身”のカニばさみタックルで、ついたあだ名が「ナガタックル」。2010年W杯に向けて前線からのプレスを完成させようとしていた日本代表に対して「守備を厚くすべき」と論陣を張る。南アでフタを開けると岡田ジャパンは本職がMFの本田圭佑をワントップにすげて守りを固める戦術の大転換でベスト16に進出し、予言が的中。

宇宙カルチャー&エンターテインメント『The Space-Timer 0』、アートナレッジハブ『The Minimalist』等を企画。ラグビーもプレーし広くフットボールを比較研究。

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