ラ・リーガ レアル・マドリード

天下を獲ったモドリッチの頭脳明晰なプレースタイルまとめ

ルカ・モドリッチ 写真:Getty Images

39歳のMFルカ・モドリッチは、2012年から所属するレアル・マドリードでの最年長出場記録や、クロアチア代表歴代最多出場記録を持ち、2018年には東欧出身者で唯一バロンドール(世界年間最優秀選手賞)に輝いたプレーヤーだ。

172cm・66kgと平均的な日本人と大差ない体格で、特段速いわけでも強いわけでもないにもかかわらず、どのようにして世界の頂点に上り詰めることができたのだろうか。その創意工夫されたプレースタイルを検証してみよう。


ルカ・モドリッチ 写真:Getty Images

魔法の右足アウトサイド

モドリッチのプレーにおいて、すぐに分かる特徴は右足アウトサイドのタッチだ。身体の向きだけではボールがピッチの右に飛んでくるのかその真逆の左なのか、それとも頭上なのか見当がつかないのでディフェンダーは対処に遅れが生じる。

ボールを持つと、素早く小さなモーションで球出しをするものだから、バスケットボールのノールックパスのように、いつどこに飛んでくるか予測がつかない。しかも、軸足の左足の前にあるボールも右足をねじ込んで右方向に蹴れてしまう。この種のアウトサイドキックはディエゴ・マラドーナ(元アルゼンチン代表、2020年没)などにも見られたが、世界でも非常に稀だ。

モドリッチは右足アウトサイドを股抜きにも有効活用している。また、ドリブルやパスの際に右足の裏やヒールも巧みに使って相手を翻弄する。シザーズ(ドリブルのフェイント)もするが、一つ一つのさりげない動きのなかで次々と意表を突くため、相手は腰砕けになる。


ルカ・モドリッチ 写真:Getty Images

粘りのあるボールキープ力

モドリッチは自分が一番プレーしやすく、かつ相手が一番奪いにくい所にボールを置く類まれな能力を持つ。身体を回転させながら浮き球をトラップするといった難易度の高いボールでも、ファーストタッチでピタリと次にプレーしやすい所に収める。

よって、簡単に飛び込むとドリブルで交わされて突破される。かといって、離れると決定的なパスを放たれる。ロングレンジからのドライブシュートが得意なため、ゴールが見えてくると相手に極めて難しい選択を迫ることになる。プレスがかかった状況でも高い技術とセンスでボールをキープするため、相手は簡単にボールを奪うことができない。

小柄なため屈強なDFは力でネジ伏せることができると思うかもしれない。しかし、素早いため身体を寄せられるところまでいかない。そして、ようやく身体を当てられる距離感になってチャージしても倒れるのではなく、その力を利用してさらに加速するボディーバランスと粘り強い下半身を持つ。

ボールを奪われないので、ためるも早く出すも自由自在で、中盤で試合のリズムを作り出すことができる。ひとまずボールを預ければ、うまくゲームをコントロールしてくれる頼もしい存在だ。

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名前Takuya Nagata
趣味:世界探訪、社会開発、モノづくり
好きなチーム:空想のチームや新種のスポーツが頭の中を駆け巡る。世界初のコンペティティブな混合フットボールPropulsive Football(PROBALL)を発表。

若干14歳で監督デビュー。ブラジルCFZ do Rioに留学し、日本有数のクラブの一員として欧州遠征。イングランドの大学の選手兼監督やスペインクラブのコーチ等を歴任。アカデミックな本から小説まで執筆するサッカー作家。必殺技は“捨て身”のカニばさみタックルで、ついたあだ名が「ナガタックル」。2010年W杯に向けて前線からのプレスを完成させようとしていた日本代表に対して「守備を厚くすべき」と論陣を張る。南アでフタを開けると岡田ジャパンは本職がMFの本田圭佑をワントップにすげて守りを固める戦術の大転換でベスト16に進出し、予言が的中。

宇宙カルチャー&エンターテインメント『The Space-Timer 0』、アートナレッジハブ『The Minimalist』等を企画。ラグビーもプレーし広くフットボールを比較研究。

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