第104回天皇杯(JFA全日本サッカー選手権大会)の決勝が11月23日に行われ、ガンバ大阪とヴィッセル神戸が対戦した。
両チーム無得点で迎えた後半19分、神戸GK前川黛也による自陣からのロングパスに、味方MF佐々木大樹が反応する。その後敵陣ペナルティエリア手前でボールを回収した同クラブFW大迫勇也、FW武藤嘉紀の順でパスが繋がり、後者のクロスボールのこぼれ球をFW宮代大聖が押し込んだ。この1点を守り抜いた神戸が最終スコア1-0で勝利。5大会ぶり2度目の天皇杯優勝を成し遂げている。
G大阪に攻め込まれる時間帯が長かったなかで、神戸は如何にして勝利を手繰り寄せたのか。ここでは国立競技場(東京都新宿区)にて行われた今回の決勝戦を振り返るとともに、この点を中心に論評していく。現地取材で得た神戸DF酒井高徳の試合後コメントも、併せて紹介したい。
神戸劣勢の原因は
試合開始直後の両チームの基本布陣は、G大阪が[4-2-3-1]で神戸が[4-1-2-3]。神戸は空中戦を得意とする大迫や武藤へのロングパスを多用したものの、G大阪の最終ライン手前に落ちるものが多かったため、同クラブの4バックや中盤の選手により跳ね返され続ける。ゆえにG大阪にボールが渡り、そこから速攻を何度も浴びた。
今年のJ1リーグで12得点を挙げているFW宇佐美貴史を負傷で欠いたなか、G大阪はMFダワン(ボランチ)を起点にパス回しを組み立てる。迎えた前半9分、ダワンが神戸の最前線と中盤の間でボールを受けると、ここから敵陣左サイドへパスが繋がる。DF黒川圭介(サイドバック)とMF倉田秋(サイドハーフ)の左サイドコンビで神戸陣営の右サイドを攻略すると、MF山田康太のクロスボールにダワンがヘディングで反応。ダワンのシュートは神戸GK前川の好セーブに阻まれたが、パス回しそのものは円滑だった。
神戸は相手ボール時に大迫とMF井出遥也が最前線に残り、[4-4-2]の守備隊形を敷いたものの、この際にG大阪の2ボランチ(ダワンとMF鈴木徳真)を誰がどのタイミングで捕捉するのかがはっきりせず。ゆえに神戸2トップと中盤の間でダワンが度々フリーになり、不自由なくボールを捌く場面が多かった。
こうした状況を受け、神戸陣営はハイプレスを諦め撤退守備へ移行する。大迫と井出の2トップも帰陣し、チーム全体で自陣のスペースを埋めようとしたが、今度はG大阪の2センターバック(福岡将太と中谷進之介の両DF)へのプレスがかからず。前半12分には福岡にボールを運ばれ、攻め上がった黒川へのパスを許したほか、この直後には中谷に正確な縦パスを繰り出されていた。
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