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DAZNの値上げとサッカーコンテンツ劣化の裏側&海外サービスとの比較

DAZN 写真:Getty Images

スポーツ専門のビデオ・オン・デマンド・サービス「DAZN」は、2016年8月に日本でのサブスクリプションサービスを開始。サッカーに関しては、2017年から10年間で約2,100億円のJリーグ放映権契約を締結(その後、契約を2年延長し、2028シーズンまで約2,239億円に変更)。加えてFIFAワールドカップ(W杯)アジア最終予選(アウェイ戦は独占配信)、AFCアジアカップやAFCチャンピオンズリーグ、WEリーグをはじめとする女子サッカーなどを配信している。

他にもプロ野球(広島東洋カープ主催試合、および日本シリーズは除く)や、F1~F3のモータースポーツ、アメリカンフットボール(NFLの一部試合)、女子テニス(WTAツアーなど)、バスケットボール(英国のSBLチャンピオンシップ、イタリアのレガ・バスケット・セリエA)といった多彩なスポーツを網羅しているDAZN。

しかし、2019年4月に最初の値上げおよび年間プランの提供を開始し、2022年以降は毎年値上げを繰り返しており、現在サービスの利用は月額ベースで4,200円(DAZN STANDARDプラン)。開始当時の1,890円から倍以上となっている。ここではDAZNの値上げとサッカーファンにとってのコンテンツ劣化について、また海外サービスとの比較によりその裏側を考察する。


DAZN 写真:Getty Images

サッカーに関連したコンテンツの劣化

値上げの一方で、サッカーに関連したコンテンツの劣化も激しい。毎週、欧州サッカー通がMCを務めた番組『Football Freaks(火曜=セリエA、水曜=プレミアリーグ、木曜=ラ・リーガ)』は、2023/24シーズン限りで予告なく終了。Jリーグファンに「DOGSO(ドグソ)」や「SPA(スパ)」といった審判用語を浸透させた『Jリーグジャッジリプレイ』も終了した。

特に『Jリーグジャッジリプレイ』については、解説を務めていた元国際審判員の家本政明氏が昨2023シーズン最後の配信で、J1昇格プレーオフ決勝(東京ヴェルディ対清水エスパルス1-1/レギュレーションにより東京Vが昇格)における後半アディショナルタイムのPKについて、「染野(PKを得た東京VのFW染野唯月)によるイニシエイト(自らDFに接触しファウルを誘発させるプレー)ではないか」と発言し、誤審を匂わせたことが原因で“消された”という噂も立った。

事実その後に登場したのが、現役審判員が登場し舞台裏の苦労を紹介する『シンレポ:Jリーグ審判レポート』なる批判精神のかけらもない内容の番組だったことが、この噂に真実味をまとわせている。

かろうじて、Jリーグのダイジェスト番組『やべっちスタジアム』と、元日本代表DFで森保ジャパンのロールモデルコーチも務める内田篤人氏がMCを務める『Atsuto Uchida’s FOOTBALL TIME』は生き残っているが、いずれも番組スポンサーが付いている。


Jリーグ旗 写真:Getty Images

来2025シーズンからはJ3中継も終了

現在DAZNは、2026W杯アジア最終予選を戦う日本代表戦において、放映権料が高騰し民放テレビ局がアウェイ戦中継を諦めたところに“救世主”として名乗りを挙げ、独占配信を行っている。

しかし、11月15日のインドネシア代表戦と、19日の中国代表戦では「無料配信」を謳っておきながら、その内容は『Fan Zone』と題し、『やべっちスタジアム』MC矢部浩之氏を中心に、漫才コンビ・ウエストランドの井口浩之氏や、ももいろクローバーZの玉井詩織氏が出演。インドネシア戦では解説の林陵平氏が、中国戦では槙野智章氏が適時コメントを挿入するという、とても「試合中継」とは呼べないバラエティー色を前面に押し出したものだった。

その上、来2025シーズンからはJ3中継がなくなり、NTTドコモが運営する「Lemino」が全試合無料ライブ配信することが決定している。それに先立ち、今2024シーズンのJ3最終節10試合、12月1日と7日に開催されるJ2昇格プレーオフも無料配信される。

DAZNの財務諸表が公開されていない以上憶測の域を出ないが、度重なる値上げと、契約締結時の約束でもあった「Jリーグ全試合ライブ配信」を裏切る形のJ3放映権の譲渡によって、「DAZNの財務状況は、実は火の車なのではないのか」といった声もある。“損切り”された形のJ3だが、これを機にJ3クラブのサポーターのDAZN離れが進み、「Lemino」に流入するだろう。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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