ラ・リーガ バルセロナ

世界のトレンドを生み出したバルサ育成組織ラ・マシアを尋ねて

アルバロ・コルテス 写真:Getty Images

ゲームの構成力はバルサが上手だが、デュエルはサモラが圧倒

やはり、パスワークはバルサの十八番だった。しかし、フィジカルに課題がみられた。

59分には空中に浮かび上がったボールに対して、バルサDFアルバロ・コルテスがサモラMFルイス・リバスと競り合って弾き飛ばされる。両者とも頭でボールを捉えたが、身長190cmあるコルテスは19歳でまだ身体の線が細く力負けした。コルテスは、87分には脚を痙れんしてゴール前で倒れこんだ。身体的には、まだ成長過程だ。

五分五分の競り合いでは、バルサの選手は軒並み当たり負けし、倒れ込んでいるシーンが目立った。この経験を乗り越えることで、たくましくなっていくだろう。


ウナイ・エルナンデス 写真:Getty Images

主将ウナイ・エルナンデスはチャンスを量産

キャプテンのMFウナイ・エルナンデスは、同試合中多くの得点機に絡んだ。

15分に右サイドからゴール中央にドリブルし左足ミドルシュートもゴールならず。19分には、左サイドからゴール中央へドリブルし左足ミドルシュートもクロスバーの上に外れる。38分には、右サイドのダルビッチからのクロスをゴール目前で胸トラップも、相手が寄せてシュートできず。

40分には、バルサの絶妙なパスワークからエルナンデスが胸トラップで抜け出したかというシーン。サモラDFアドリアン・ボロが手をかけ反則かと思いきやノーファウル。ウレニャが抗議でイエローカードを受けた。

73分には、バルサ右サイド16歳のペドロ・フェルナンデスから中央エルナンデスにつながり、ドリブルで前進から右足シュートもクロスバーに当たる。


アルベルト・サンチェス監督 写真:Getty Images

アジアに造詣が深いアルベルト・サンチェス監督

バルサ・アトレティックの指揮官を務めるアルベルト・サンチェス監督は、中国(北京BSU/2018-2019/シニアコーチ)やクウェート(アル・カーディシーヤ/2019-2020/アシスタント)、サウジアラビア(アル・ファトフU20/2020-2021)でも指導経験があり、アジアに造詣が深い。

バルサでは2021年からユースチームを率いて、2022年からバルサ・アトレティックのアシスタントコーチを務め、今年7月監督に就任している。

バルサ・アトレティックを指揮した後にトップチームの監督に就任した例は、グアルディオラ監督(2007-2008バルサB、2008-2012トップチーム)やルイス・エンリケ監督(2008-2011バルサB、2014-2017トップチーム)など、多く見受けられる。


ヨハン・クライフ氏 写真:Getty Images

クライフの理想に磨きをかけるバルサ

先述のバルサのトレーニング施設、シウタ・エスポルティバの壁には、ヨハン・クライフ(2016年没)の現役時代と監督時代の肖像と語録も見ることができる。

言わずとしれたサッカー史に残るオランダ代表の伝説的な人物だが、バルサの監督(1988-1996)としてはリーグ4連覇やUEFAチャンピオンズカップ優勝などの実績を残し、現在のバルサの成功につながる礎を築いた。

天才クライフが理想として掲げた「想像力あふれる攻撃的なプレースタイル」に、バルセロナは日々、磨きをかけている。

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名前Takuya Nagata
趣味:世界探訪、社会開発、モノづくり
好きなチーム:空想のチームや新種のスポーツが頭の中を駆け巡る。世界初のコンペティティブな混合フットボールPropulsive Football(PROBALL)を発表。

若干14歳で監督デビュー。ブラジルCFZ do Rioに留学し、日本有数のクラブの一員として欧州遠征。イングランドの大学の選手兼監督やスペインクラブのコーチ等を歴任。アカデミックな本から小説まで執筆するサッカー作家。必殺技は“捨て身”のカニばさみタックルで、ついたあだ名が「ナガタックル」。2010年W杯に向けて前線からのプレスを完成させようとしていた日本代表に対して「守備を厚くすべき」と論陣を張る。南アでフタを開けると岡田ジャパンは本職がMFの本田圭佑をワントップにすげて守りを固める戦術の大転換でベスト16に進出し、予言が的中。

宇宙カルチャー&エンターテインメント『The Space-Timer 0』、アートナレッジハブ『The Minimalist』等を企画。ラグビーもプレーし広くフットボールを比較研究。

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