EURO ドイツ代表

ドイツ代表クロース、現役最後の気合が召喚したものは【ユーロ2024】

アルバロ・モラタ(左)トニ・クロース(右)写真:Getty Images

引退を覚悟した瞬間

クロースは、試合119分にスペインの2点目が入ると顔を横に振った。引退の時を覚悟したのだろうか。終了間際、中央から右サイドにパスを散らすが軸足も蹴る足もぎこちない。けいれんしそうなのを抑えながら無理してのプレーだ。

そしてクロースのパスを受けたFWトーマス・ミュラー(バイエルン・ミュンヘン)がクロスを入れると、FWニクラス・フュルクルク(ボルシア・ドルトムント)が頭で合わせるも枠の右に外れた。これが、クロース最後のハイライトプレーとなった。得点にはつながらなかったが、ドイツはしっかりとシュートまでもっていった。

試合後は疲労感をみせつつ、晴れ晴れとした表情と感涙が混ざったような複雑な表情をみせたクロース。ピッチでスペインの主将であるFWアルバロ・モラタ(アトレティコ・マドリード)と長い抱擁を交わした。チームは違えど、2人ともマドリードの住人だ。

現役時代の最後の所属となったレアル・マドリードでは、UEFAチャンピオンズリーグ(CL2023-24)で優勝を果たした。しかし人生はそんなに全てがうまくいくものではない。代表では志半ばで敗れた。しかし、この試合でクロースが完全燃焼したことは誰の目にも明らかだった。母国ドイツで開催されたユーロを引退の場所に選んだクロース。この無念は、次のキャリアの原動力になることだろう。


ダニ・オルモ 写真:Getty Images

スペインのスーパーサブ、オルモという存在

クロースのタックルにより、早くも試合4分に出番がまわってきたスペインのオルモは、この試合で1得点1アシストを決めた。

ペドリと同じトップ下のポジションでプレーしたため、オルモはクロースとも多くのマッチアップがあった。またブンデスリーガでプレーするオルモは、ドイツ代表を知り尽くしている。これほど頼もしいスーパーサブもいないだろう。

クロースは自分のファウルで途中出場することになったオルモの大活躍を目の当たりにした。そして結果的に、これが自身の現役最後の試合になってしまった。オルモは、クロースのあまりの意気込みのため、早々と召喚してしまった大魔神だったのかもしれない。

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名前Takuya Nagata
趣味:世界探訪、社会開発、モノづくり
好きなチーム:空想のチームや新種のスポーツが頭の中を駆け巡る。世界初のコンペティティブな混合フットボールPropulsive Football(PROBALL)を発表。

若干14歳で監督デビュー。ブラジルCFZ do Rioに留学し、日本有数のクラブの一員として欧州遠征。イングランドの大学の選手兼監督やスペインクラブのコーチ等を歴任。アカデミックな本から小説まで執筆するサッカー作家。必殺技は“捨て身”のカニばさみタックルで、ついたあだ名が「ナガタックル」。2010年W杯に向けて前線からのプレスを完成させようとしていた日本代表に対して「守備を厚くすべき」と論陣を張る。南アでフタを開けると岡田ジャパンは本職がMFの本田圭佑をワントップにすげて守りを固める戦術の大転換でベスト16に進出し、予言が的中。

宇宙カルチャー&エンターテインメント『The Space-Timer 0』、アートナレッジハブ『The Minimalist』等を企画。ラグビーもプレーし広くフットボールを比較研究。

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