スペイン代表 EURO

スペインにとって準決勝が聖戦になる理由とは?【ユーロ2024】

ミケル・メリーノ 写真:Getty Images

最後は力尽きたドイツ

104分、スペインはミケル・オヤルサバル(レアル・ソシエダ)が右サイドから左足でシュートも外れる。105分+1分、ドイツはビッグチャンス。左サイドからミュラーのクロスにハフェルツが左足でシュートも枠の右に外れる。106分、ククレジャの左手にボールが当たるも、意図的ではなかったとしてPKにはならず。117分、ドイツはキミッヒが右サイドから入れたアーリークロスにフュルクルクが頭で合わせるもゴールならず。

119分、スペインDFマルク・ククレジャ(チェルシー)のショートパスを受けたオルモが左サイドから右足でクロスすると、途中出場のMFミケル・メリーノ(レアル・ソシエダ)が頭で決めてスペインが勝ち越し(2-1)。

前掛かりになるドイツに対してスペインは120+2分、カウンターからFWフェラン・トーレス(バルセロナ)がGKと1対1で右足シュートも枠を外れる。試合終了のホイッスルが鳴るとスペインは、まるで優勝したかのように喜びを爆発させ、お祭り騒ぎはしばらく続いた。


スペイン代表 写真:Getty Images

序盤スペインが優勢、ドイツは猛追のデータ

前半(45分)終了時点の攻撃回数はドイツの16回に対してスペインは24回。シュート数はドイツの3本に対してスペインは8本とやや差をつけた。

延長戦(120分)が終了した時点の攻撃回数は、ドイツもスペインも56回。シュート数はドイツの23本に対してスペインは18本だった。

つまり、試合の序盤はスペインのペースで、終盤にかけてドイツが追い上げたことをこのデータは示している。しかしドイツが後手を踏んだ感は否めず、最後にとどめを刺された形だ。


ダニエル・カルバハル 写真:Getty Images

スペインに勝利のための自己犠牲あり

スペインのDFダニエル・カルバハル(レアル・マドリード)は、同試合で自分が退場になって次の試合に出場できなくなるのを承知でファウルした。

同試合120+4分、ドイツの最後の攻撃かという場面で、FWジャマル・ムシアラ(バイエルン・ミュンヘン)がサイドをスピードに乗ってドリブル突破しようとすると後方から両腕で抱え込んで阻止したカルバハル。そのFKをGKがキャッチすると同時に試合が終了した。

この日、2枚目のイエローカードで、レッドカードを提示されたカルバハルは座り込んだまま涙した。意図的なファウルをすべきか否かは別として、チームが勝つために自己を犠牲にした。この涙は、スペインのイレブンがしっかりと目に焼き付けた。

この試合では最終的に16枚のイエローカードが提示された。カルバハルだけでなくスペインのDFロビン・ル・ノルマン(レアル・ソシエダ)は2枚目の累積警告で準決勝は出場停止に。また、ベンチでイエローカードをもらったキャプテンのモラタも累積で出場停止となり、涙を流しながら戦況を見守った。

10日のフランスとの準決勝は、スペインにとって自己犠牲を払った選手たちを決勝に立たせるための「聖戦」になるということが明確になった。

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名前Takuya Nagata
趣味:世界探訪、社会開発、モノづくり
好きなチーム:空想のチームや新種のスポーツが頭の中を駆け巡る。世界初のコンペティティブな混合フットボールPropulsive Football(PROBALL)を発表。

若干14歳で監督デビュー。ブラジルCFZ do Rioに留学し、日本有数のクラブの一員として欧州遠征。イングランドの大学の選手兼監督やスペインクラブのコーチ等を歴任。アカデミックな本から小説まで執筆するサッカー作家。必殺技は“捨て身”のカニばさみタックルで、ついたあだ名が「ナガタックル」。2010年W杯に向けて前線からのプレスを完成させようとしていた日本代表に対して「守備を厚くすべき」と論陣を張る。南アでフタを開けると岡田ジャパンは本職がMFの本田圭佑をワントップにすげて守りを固める戦術の大転換でベスト16に進出し、予言が的中。

宇宙カルチャー&エンターテインメント『The Space-Timer 0』、アートナレッジハブ『The Minimalist』等を企画。ラグビーもプレーし広くフットボールを比較研究。

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