クロアチアは守備が崩壊寸前に
試合はクロアチアがリードするまさかの展開。追う立場から追われる立場となり、今度はクロアチアが守りで受け止めて、イタリアがボールをキープする。
しかし、イタリアの猛攻に守備がほつれはじめ、守備が崩壊寸前のところで選手交代をしてどうにか修繕を行い、その場しのぎが続くクロアチア。一時の危機的な状況を脱しても、苦しそうなのはリードしているクロアチアの方だ。
78分には、たまらずファウルで止めたDFマリン・ポングラチッチ(レッチェ)に警告。クロアチアの余裕のなさの表れだ。
87分にはイタリアのFWフェデリコ・キエーザ(ユベントス)が右サイドから低いクロスをGKとディフェンスラインの間に入れ、触れば得点というところに途中出場のダヴィデ・フラッテージ(インテル)とFWジャンルカ・スカマッカ(アタランタ)が滑り込むが無常にも触ることができず。
提示されたアディショナルタイムは8分。イタリアは、自ら布陣を分解寸前にして攻守のバランスをいびつにする危ない賭けに出る。その隙を突いて、クロアチアが安全地帯にボールを運び、うまく時間を使う。ここはさすがにクロアチアも試合巧者だ。ベンチに退いて戦況を見守るモドリッチは、立ち上がって身体からユニフォームを剥がすと歯で引き裂かんばかりだ。
そして90+8分、イタリアのラストチャンスかというシーンが訪れた。DFカラフィオーリがピッチ中央を突進してドリブル突破すると左サイドに散らす。そのボールに途中出場のMFマッティア・ザッカーニ(ラツィオ)がダイレクトで右足を振ると、虹のように鮮やかな弧を描いたボールは白い枠の中に吸い込まれていく。あまりに劇的で、まるでスローモーションのように映った。
イタリアDFカラフィオーリが火事場の馬鹿力を放出
なぜディフェンダーであるカラフィオーリが、体力を消耗した終盤にあれだけエネルギッシュに前方に攻撃参加することができたのだろうか。
イタリアの同点弾をお膳立てをしたカラフィオーリは、21日のスペイン戦(0-1)でオウンゴールを喫した選手である。その敗れた試合以来、挽回をしたいという一心だったに違いない。
アシストのシーン以外にも、気迫のこもったプレーを多く披露した。「転んでも、ただでは起きない」。その心意気をひしひしと感じた。
イタリアが魅せた本気のカテナチオ
前半終了時点のボールポゼッションは、クロアチアの61%に対してイタリアが39%。攻撃回数はクロアチアの15回に対してイタリア13回。シュート本数はクロアチアの2本に対してイタリアが6本だった。
実力が拮抗したチーム同士だが、前半の戦いはイタリアのペースだった。スコアは0-0でクロアチアがボールを支配したのに、なぜそのように言い切ることができるのか、と思うかもしれない。
この試合開始時点でクロアチアが勝点1に対してイタリアは3。同時刻に行われる裏の試合では実力で勝るスペインがアルバニアに勝つ算段がつく。
つまり、イタリアは引き分け以上でグループ2位が見えてくるのだ。一方のクロアチアは、そもそもこの試合で勝たないとイタリアを上回ることができない。
ここで繰り出したのが先祖伝来の「カテナチオ(かんぬき/堅守速攻サッカーの戦術)」だ。昨今のイタリア代表は、必ずしも守備を固めるだけではなく、多彩な組み立てと攻撃を行う。しかし、ここぞという時にアズーリ(イタリア代表)のDNAに刻まれる堅守の配列が蘇ったのである。
そして、クロアチアの動きを封殺すると、逆に有効なカウンター攻撃で深くえぐるように相手陣内に侵入し得点機をつくった。
勝たなければならないクロアチアは、ボールは持てど、有効打が出せずに試合を折り返した。イタリアの思惑通りの前半だった。
後半にクロアチアも立て直しを図り先制したものの、イタリアは攻めて良し、守って良しで、総合力が高かった。
試合を振り返ると、予想通りの非常にハイレベルな戦いとなった。ユーロ2024のグループステージにおける屈指の好ゲームだったと言えるだろう。
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