ポルトガル代表 EURO

史上最多出場C・ロナウドを大解剖。パス精度驚愕の100%で逆転勝ち【ユーロ2024】

ディオゴ・ジョッタ(左)クリスティアーノ・ロナウド(右)写真:Getty Images

抜群の存在感、C・ロナウドの動き

2004年大会でデビューし、ユーロ史上初の6大会目の最多参加となるロナウド。チェコとの今試合では、フル出場してセンターフォワードのような動きに徹し、ポルトガルの1得点目を誘発した他、5本のシュートを打った。

最初の大きなチャンスは32分。中盤で味方がパスを繋いでいると、何気なくセンターバックのブラインドサイドにぐるっと入る。ディフェンダーがボールを見ている方向の反対側に「消える動き」だ。そして、全くマークされない状況でディフェンスラインの裏に抜け出してシュートした。GKがセーブするも大きな決定機だった。

直後の33分には、ポストプレーでボールを受けるとヒールでラストパスを出し、アシストかというシーンもつくった。前半終了間際には、中央でボールを受けると振り向いてミドルシュートもGKが弾いた。

ロナウドがボールから遠いブラインドサイドに動くシーンは多く見られた。そして、時に引いてきてポストプレーを行う。この試合のパス精度は驚愕の100%だった。

走行距離は9.31kmで平均的な距離より少し短いが、一つ一つのプレーの精度が格段に高い。以前ほど運動量はないがサボっているわけではなく、チームとして必要なポジショニングの動きはきっちりとこなしている。

走れないのではなく、あえて走らないようにしている。体力を温存することで、重要な瞬間にプレーの精度を高めようとしているのだ。FWだから、それはもちろん得点機のためだ。ここぞという時には、短くも鋭いスプリントを行っていた。

クリスティアーノ・ロナウド 写真:Getty Images

プレーと体のコンディションまだまだ余裕

動きの質や鍛え上げたフィジカルは、走行距離を補って余りある。鍛え抜かれた身体は健在だ。体が大きな選手は動作が大味になりがちだが、ロナウドは肉体的な強さと体のコーディネーションをハイレベルで両立させている。

マンチェスター・ユナイテッドからサウジアラビアに移籍した際に、もう選手としての第一線を退いたと思ったファンもいるだろう。中東は、代表キャリアを引退した選手が行く「年金リーグ」と言われることもあるが、ロナウドには当てはまらない。

むしろ、欧州でサッカーをやり尽くして新たな挑戦をしているように映る。主要大会ユーロの試合に先発しているのに、年金生活者のわけがない。バリバリの現役である。

事実としてロナウドはサウジリーグで2023/2024シーズンに31試合出場35得点で同リーグの史上最高得点を更新した。ロナウドはサウジに移籍してからも練習の虫であり、選手として高いレベルを維持している。

39歳で代表の試合に先発している時点で驚くべきことだが、プレーと体のコンディションにまだまだ余裕を感じさせる。


ぺぺ 写真:Getty Images

ペペがユーロ史上最年長出場

ところで上には上がいた。ポルトガル代表DFペペ(ポルト)はこの試合にセンターバックとして先発し、41歳113日でユーロの最年長出場記録を更新した。

これまでの記録は、ハンガリー代表GKガボル・キラーイの40歳86日だった。

ページ 2 / 2

名前Takuya Nagata
趣味:世界探訪、社会開発、モノづくり
好きなチーム:空想のチームや新種のスポーツが頭の中を駆け巡る。世界初のコンペティティブな混合フットボールPropulsive Football(PROBALL)を発表。

若干14歳で監督デビュー。ブラジルCFZ do Rioに留学し、日本有数のクラブの一員として欧州遠征。イングランドの大学の選手兼監督やスペインクラブのコーチ等を歴任。アカデミックな本から小説まで執筆するサッカー作家。必殺技は“捨て身”のカニばさみタックルで、ついたあだ名が「ナガタックル」。2010年W杯に向けて前線からのプレスを完成させようとしていた日本代表に対して「守備を厚くすべき」と論陣を張る。南アでフタを開けると岡田ジャパンは本職がMFの本田圭佑をワントップにすげて守りを固める戦術の大転換でベスト16に進出し、予言が的中。

宇宙カルチャー&エンターテインメント『The Space-Timer 0』、アートナレッジハブ『The Minimalist』等を企画。ラグビーもプレーし広くフットボールを比較研究。

筆者記事一覧