Jリーグ アビスパ福岡

アビスパ福岡が初タイトルを獲得できた理由と背景【ルヴァン杯決勝】

アビスパ福岡 写真:Getty Images

アビスパ福岡に関わる全ての人にとって、忘れられない記念日となったであろう2023年11月4日。国立競技場で開催された浦和レッズとのYBCルヴァンカップ(ルヴァン杯)決勝戦にクラブ初タイトルを懸けて挑んだ福岡は、2-1で見事な勝利を挙げた。Jリーグ参入28年目にして悲願のビッグタイトルを手にしたこの日は、未来永劫語り継がれるに違いない。

ここでは、福岡に初タイトルをもらたした2つの秘策とこれまでの苦難、クラブを支えたサポーターらの団結力についてみていこう。


長谷部茂利監督(左)前寛之(右)写真:Getty Images

秘策その1:MF前寛之のシャドー起用

決戦を前に発表されたアビスパ福岡のスターティングメンバーには予想外の点があった。DF森山公弥、MF井手口陽介、MF前寛之とボランチを本職とする選手が3人いたのだ。これを見て、シャドーでのプレー経験がある井手口がそのポジションに入ると予想した福岡サポーターは多かっただろう。メンバー表を見た浦和レッズ側もそう思ったのではないだろうか。ところが、試合開始後そのポジションにいたのは意外にも前であった。

前は水戸ホーリーホック時代から長谷部監督と師弟関係にあり、監督のサッカーを最もよく知る選手のひとりだ。判断力と予測力、危機察知能力に優れ「アビスパの心臓」とも呼ばれている。重要な試合には何らかの秘策を用意する長谷部監督だが、この日のために用意したその策がズバリ的中する。

試合開始早々の5分、前は右サイドのMF紺野和也に展開した後ゴール前へ猛ダッシュ。紺野が縦に突破しグラウンダーのクロスを送ると、走り込んで来た前がそのままゴールし先制に成功した。左利きの紺野が右足でボールを送り出したタイミングと、GKとDFラインの間に勢いよく飛び込んできた前のタイミングが完全に一致した見事なプレー。前の予測力が攻撃で発揮された瞬間だった。貴重な先制点を挙げた前は、この試合でMVPを獲得している。


アビスパ福岡 DF宮大樹 写真:Getty Images

秘策その2:グラウンダーの速いクロス

早い時間帯での先制に成功すると、福岡は持ち前の守備ブロックを敷き浦和の前進を拒みつつボール奪取からカウンターに繋げた。そして前半アディショナルタイムには追加点を奪うことにも成功する。紺野が左サイドから仕掛けると、再びグラウンダーのクロスを供給。DF宮大樹が左足を合わせてネットを揺らした。試合後、FW山岸祐也が「速いクロスはずっと練習していた」と語ったように、グラウンダーのクロスは高さと強さに優れる浦和のDFマリウス・ホイブラーテンとDFアレクサンダー・ショルツのセンターバックコンビを攻略する策だった。

前半を2-0で終えた福岡。後半は山岸のPK失敗や浦和MF明本考浩に得点を許すなど1点差となったが、守備の集中力が切れることはなかった。後半アディショナルタイムにはFWホセ・カンテにシュートを放たれ、あわやという場面もあったが、ボールはポストに当たって跳ね返り最大のピンチを脱した。その後も最後まで耐えきった福岡が2-1で勝利。Jリーグ参入から28年目にして悲願の初タイトルを獲得した。

試合終了のホイッスルと共に、ピッチ上でも観客席でも笑顔と涙が溢れ、この日を待ち望んだ全員が喜びを分かち合った。キャプテンのDF奈良竜樹をはじめとする選手たち、福岡から駆け付け国立競技場で声を枯らしたサポーターたち1人ひとりのストーリーが結実した美しい瞬間だった。

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名前椎葉 洋平
趣味:サッカー観戦、読書、音楽鑑賞
好きなチーム:アビスパ福岡、Jリーグ全般、日本のサッカークラブ全般

福岡の地から日本サッカー界を少しでも盛り上げられるよう、真摯に精一杯頑張ります。

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