Jリーグ 湘南ベルマーレ

逃げきり方を見失った湘南。痛恨ドローの新潟戦を検証【J1リーグ2023】

FW大橋祐紀(左)MF高木善朗(右)写真:Getty Images

2023明治安田生命J1リーグ第23節の全9試合が、8月12日と13日に各地で行われた。

同リーグ最下位の湘南ベルマーレは12日、敵地デンカビッグスワンスタジアムでアルビレックス新潟と対戦。最終スコア2-2で引き分けている。

前半に2点のリードを奪ったものの、後半30分とアディショナルタイムの失点で勝ちきれなかった湘南。今節での最下位脱出は叶わず、J1リーグ残留に向けて手痛い勝ち点の取りこぼしとなった。

湘南が逃げきれなかった原因は何か。ここでは新潟戦を振り返るとともに、この点を検証したい。


アルビレックス新潟vs湘南ベルマーレ、先発メンバー

狙い通りの守備で湘南が先制

最終ラインから丁寧にパスを繋いでくる新潟に、湘南がハイプレスで応戦。基本布陣[4-2-3-1]の新潟のパス回しを、サイドへ追いやろうとする狙いが窺えた。

この日も[3-1-4-2]の布陣で臨んだ湘南は、大橋祐紀とディサロ燦シルヴァーノの両FW(2トップ)が、新潟の2センターバックからボランチへのパスコースを塞ぐ。これにより新潟のDF新井直人(右サイドバック)が自陣後方でパスを受ける場面が多くなり、ここに湘南のMF山田直輝が積極的にプレスをかけた。

GKや最終ラインからのパス回しの際、新潟の両サイドバックが自陣後方の大外のレーンや味方センターバックとほぼ同列の位置へ降りてボールを受けたため、湘南としてはハイプレスの的を絞りやすい展開に。この新潟の攻撃配置が修正されないうちに、湘南が先制ゴールを挙げた。

前半9分、大橋とディサロの2トップが新潟GK小島亨介からMF高宇洋へのパスコースを塞いだうえで、湘南MF小野瀬康介がホームチームのDF渡邊泰基(左センターバック)に鋭く寄せる。

この守備で新潟のパス回しをDFトーマス・デン(右センターバック)や新井方面へ追いやると、デンの強引な縦パスに湘南の選手たちが食いつく。センターサークル付近へ降りた新潟FW鈴木孝司からはボールを奪えなかったものの、鈴木からDF長谷川巧へのパスを、湘南のDF杉岡大暉(左ウイングバック)が回収。ここからアウェイチームの速攻が始まり、左サイドを駆け上がった山田の低弾道クロスを大橋がスライディングで押し込んだ。キックオフ直後からの湘南の狙いが結実した場面と言えるだろう。


アルビレックス新潟 FW鈴木孝司 写真:Getty Images

試合序盤に乱れた新潟の攻撃配置

新潟としては、試合序盤に攻撃配置を整えられなかったことが悔やまれるところだろう。1失点目の場面では、湘南の山田と杉岡のどちらにも捕捉されない中間エリアに長谷川(右サイドハーフ)が立ち、鈴木からのパスに反応していれば、ボールを奪われなかったかもしれない。杉岡の射程圏内に立ったことで、鈴木からのパスを受け損ねた。

また、この場面でも新潟の両サイドバックが自陣後方の大外のレーンに立っており、湘南のインサイドハーフやウイングバックのプレスを浴びやすい状況に。サイドバックがこの位置でボールを受けても、自身の傍にはタッチラインがあるため、その後のパスコースが限られてしまう。サイドバックが内側に立ち、中央とサイドどちらにもパスを出せる状況を作る。もしくはサイドバックとセンターバックの間へボランチの選手が降り、パスを捌くなどの工夫が今後は必要だろう。新潟のシーズン終盤戦に向けた課題が明確になった失点シーンだった。

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名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

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