秘密3:計算し尽くされた書体とサイズ感
ヴェネツィアのユニフォーム人気の秘密第3は、クラブ名「VENEZIA(ヴェネツィア)」の書体だ。フォントデザインと呼ばれる文字の形状というのは、商品の売れ筋や物の雰囲気を360度コロッと変えてしまうほど、非常に影響のある部分。この技を存分に活かし大成功をさせているのが、ヴェネツィアのユニフォームだと筆者は確信している。
特にホームユニフォームが謙虚にそれを物語っていて、黒地のダークな雰囲気にゴールドの華奢な書体で「VENEZIA」と上品。文字サイズも控えめに、周りの黒の余白を残す。すると文字は小さめなのに、黒の中の小さなゴールド文字から、ヴェネツィアの強さが訴えかけられて来るよう。これがもしゴシック体と呼ばれる、ややポップで太めの文字だったら?うーん、と考えてしまうだろう。
秘密4:ファッション雑誌広告仕様の演出
ヴェネツィアのユニフォーム人気の秘密第4は、最初から他のクラブとは違う路線でユニフォームがリリースされていることだ。通常サッカーの新ユニフォームを発表する際は、そのクラブのプレーヤー数名が着用し、強さを強調するポーズや、イメージに沿った構成で表現される。もちろんヴェネツィアも同様ながら、根本的にサッカーというスポーツ目線ではユニフォームを紹介していないところが、大きな違いを生み出している。
モデルは選手ではなくファッションモデルを起用。ユニフォームを単純に着用するだけではなく、ファッションとしてアレンジさせた状態の写真をリリースしている。例えば、半袖ホームユニフォームに白のブラウスを重ね着したスタイルや、ショートパンツとゴールドの大ぶりイヤリングとの組み合わせなど、一見すると有名ファッション誌『Vogue(ヴォーグ)』などの、見開き数百万円の広告ページのような仕上がりだ。
サッカークラブよりもファッションブランド化?
こうなるとヴェネツィアは、サッカークラブよりもファッションブランド化していくのではないか?と考えていた矢先、ついに今年(2022年)9月21日に、クラブはイタリアのリアルト橋の側にユニフォームを販売する旗艦店をオープンした。完全なファッションブランドへの道へと順調に進んでいる。オープン初日はイベントも開催され、多くの人々が念願の入手困難なユニフォームを手に取ることが出来たようだ。
なお、ヴェネツィアのユニフォームの製造元は『Kappa』だが、デザインはドイツのグラフィックデザイン会社『ビューロー・ボルシェ(Bureau Borsche)』が担当。高級ファッションブランド『バレンシアガ』などを手掛けるデザイン会社である。
サッカーのユニフォームが「ファッション」として、その役割が今刻々と移り変わろうとしている。非常に楽しみだ!
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