しかしながら、広島は最初からディフェンスの安定性を手にしていたわけではなかった。セットプレーからの失点こそないが、エリア内で犯したファウルの数は7。これはJクラブの中で最多となっている。1年を通してクオリティと効率を維持することは非常に難しい。2008年に大分トリニータが記録した24という最少失点記録の更新は難しいだろう。実際に今シーズンの最少失点は広島ではなく川崎。皮肉にもJクラブの中で最も攻撃的なチームであり、ボールを保持し、カウンターに対して脆弱さを見せるチームだ。今シーズンの鬼木達監督はそれを最小限に抑えていると言えるだろう。
等々力陸上競技場でのベガルタ仙台に1-0で勝利した試合では、川崎はわずか5本のシュートしか許さずシーズン最高のストライカーである西村拓真を抑え込んで3試合連続の得点記録を終わらせた。
川崎は被シュート数が最も少ないクラブだ(164。対する広島は226)。相手にボールを握らせないことが結果的に相手のチャンスを少なくして、最少失点に繋がっている。また、彼らは個人技からのゴールを許していない唯一のチームでもある。言い換えるならば川崎はオフェンスしながらディフェンスし、広島はディフェンスしながらオフェンスしているのだ。川崎が高いディフェンス力を維持しながら確実に勝ち点を積み重ねれば昨シーズンよりもゴール数は減り、面白いチームにはならないかもしれない。ただ、彼らが勝ち続ける限り、サポーターから不満の声は聞こえてこないだろう。
著者:チアゴ・ボンテンポ
1985年生まれのブラジル人ジャーナリスト。サンパウロ在住。幼少期よりスポーツとりわけサッカーを愛する。大学時代にジャーナリズムを専攻し2011年よりブラジル『Globo Esporte』で日本サッカーを担当している。ブラジルのボタフォゴ、アーセナル、そして日本代表の熱烈なサポーターである。将来の夢は日本語を流暢に扱うこと、富士山登頂、Jリーグスタジアムを巡ること。
Twitter: @GunnerTNB
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