選手たちに前を向かせたフィッカデンティの言葉
今季のJ1リーグはワールドカップ・ロシア大会開催による中断期間を挟むことにより、4月から5月にかけてはYBCルヴァンカップ・グループステージも含め、週2,3回の頻度で試合をこなすハードスケジュールであることは周知の事実だ。試合間隔が短いと、コンディション回復が間に合わないことによる疲労の蓄積や負傷離脱、さらには十分の時間が取れないことによる次戦に向けた戦術面の確認の不十分さという観点から、主力選手の起用法をはじめメンバーのやり繰りに難しさが伴うことが開幕前から予想されていた。
ただその中でも3年目に突入したフィッカデンティ体制のもと、FW豊田陽平を除く主力選手の流出を阻止し、かつ中盤アンカーをはじめ手薄なポジションにおいてピンポイントで即戦力獲得を行い、昨季の戦術をベースにしてシーズンに臨める環境が整ったこと、そしてクラブの根幹を成す「走り負けない地力」が過密日程の中でより結果に反映されやすいという考えから、今季のJ1リーグでサガン鳥栖が上位に食い込む可能性が十分にあると筆者は予想していた。
ところが蓋を開けてみると、4月のルヴァンカップ・グループステージ第3節・V・ファーレン長崎戦の黒星をきっかけに公式戦9試合未勝利という長いトンネルに入ってしまった。J1リーグ参戦以来、初となる大型連敗を喫した原因を「不運」という一言で片づけるのはあまりにも煩雑(はんざつ)であるだろう。
しかし選手が低調なパフォーマンスに終始した試合は見られず、前線で起点となり、対戦相手に脅威を与えるコロンビア人FWビクトル・イバルボやFW池田圭をはじめとする負傷離脱者の続出や不利な判定が響いた格好だ。特筆すべきは、トンネルの入り口となったJ1リーグ第6節・セレッソ大阪から4試合連続で疑惑の判定に泣かされ、フィッカデンティ監督が怒りをぶちまけたことだ。
それでもこのイタリア人指揮官は運に見放されていることを前提としつつ、試合後にピッチ上でのパフォーマンス自体は決して悪いものではないと何度も口にするなど、守備面でのハードワークをはじめチーム全体が我慢強く戦う姿勢の継続すべく、選手たちが自信を失わないようなマネジメントを徹底していたように思えた。
これに加え、第12節・北海道コンサドーレ札幌戦で7連敗を喫した直後のサポーターの反応や止むことのない声援が選手たちに前を向かせたに違いない。連敗ストップとなった清水エスパルス戦でPKを沈めたMF原川力の「前節の試合終了後にも素晴らしい声援をいただいて、勝利でこたえなければいけないと思っていた」という試合後の言葉通り、ファンやサポーターの声援は確実に選手が前を向くための原動力となっている。
そして清水エスパルス戦での勝利からこの中断期間直前の2試合連続スコアレスドローへと繋がるのであるが、連敗中でも「対戦相手に走り負けない」というコンセプトをチーム内で共有し続けたこと、そして指揮官フィッカデンティがチームに自信を与え続けたことが、“ウノゼロ”を得意とする本来の戦いを取り戻すための軌道に乗せる要因となったのではないのだろうか。今後はタフなシーズン後半戦に向けた準備はもちろん、連敗中にも課題として挙がっていた「得点力不足」解消へ大型補強敢行を示唆しているクラブ首脳陣の動きにも期待したい。
著者:津田翔汰
フットボールトライブ編集部。Calcio,Bianconeroをこよなく愛する若武者
Twitter:@specialheart889
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