著者:津田翔汰
「結果にこだわって全てやりたい」
FC東京戦の試合前のインタビューにて指揮官マッシモ・フィッカデンティは淡々と語った。リーグ戦7連敗という長いトンネルを潜り抜けたサガン鳥栖はこの中断期間直前の一戦でもゴールを割らせず、着実に1ポイントを積み重ねた。
この一戦で相対したFC東京は今季のJ1リーグにおいて“波乱”の立役者となっている。昨季とは一変、長谷川健太監督のもと鍛え上げられたこの“戦う集団”は、ボールホルダーに対する素早いプレッシングでサガン鳥栖にビルドアップの局面で自由を与えない。それでも狭いスペースでのワンタッチによる縦に速い攻撃でゴール前に迫ったサガン鳥栖ではあったものの、後半にFC東京がギアチェンジを行うと、たちまち自陣に押し込まれ決定機を許す展開となる。
しかしこの日はゴールマウスにFC東京にも在籍経験のある権田修一が立ちはだかった。海外挑戦も試みたこの守護神は幾度となく決定機を阻止する。75分にはMF髙萩洋次郎のクロスに斜めに走りこんできたMF田邉草民が合わせたヘディングシュートを左手で弾き出すと、試合終了間際にはディフェンスラインの間のスペースを突いたパスに反応したFW前田遼一に対し、冷静に間合いを詰めシュートコースを消すなど、最高のパフォーマンスを披露。これにはイタリア人指揮官も「権田はクラブ加入以来最高の出来だった」と珍しく個人名を出し、称賛の言葉を並べた。
ただ権田の活躍のみならず、主将を務めるDF吉田豊をはじめ決定機一歩手前でのボールホルダーに対する寄せの速さが際立っていたことも忘れてはいけない点だ。再三のセーブでチームを救った権田もチームメイトのハードワークに言及した上で「なかなか攻めれない中で後ろが守るということは序盤できなかったが、それが最近できている」と上向きつつあるチーム状態に手応えを感じているようだ。
サガン鳥栖は前々節の清水エスパルス戦で久々の白星を挙げると、完全アウェイの埼玉スタジアムで臨んだ前節の浦和レッズ戦では終始押しこまれる苦しい展開を強いられながらも、持ち前の自陣における粘り強い守備を披露し、今季初となるクリーンシートを達成。そしてこの難敵・FC東京との一戦でも地力の差を見せつけられたものの、無失点で凌ぎ2試合ドローでシーズン前半戦を終えた。ここでこの直近2試合での2ポイントがどのような過程を経て手に入れたものであるのか、中断期間を挟んだ後半戦に向けた展望とともに考察してみたい。
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