Jリーグ 川崎フロンターレ

鬼木フロンターレは風間フロンターレを超えられるか。謎の存在から優勝候補に化けた“革命家の後釜”を分析する

鬼木Fは風間Fを超えられるか

著者:チアゴ・ボンテンポ
1985年生まれのブラジル人ジャーナリスト。サンパウロ在住。幼少期よりスポーツとりわけサッカーを愛する。大学時代にジャーナリズムを専攻し2011年よりブラジル『GloboEsporte』で日本サッカーを担当している。ブラジルのボタフォゴ、アーセナル、そして日本代表の熱烈なサポーターである。将来の夢は日本語を流暢に扱うこと、富士山登頂、Jリーグスタジアムを巡ること。

 今シーズンの初め、川崎フロンターレは完全に謎の存在であった。新人監督を迎え、前4シーズン活躍したトップ得点者も不在。共に元々センターフォワードではなかった家長昭博と阿部浩之を除いて大きな契約もない。2016年の素晴らしい功績を再現できるとは想像し難かった。そんな予想に反して、今年の彼らは昨年の良い部分を持って日本で最高のサッカーをしており、J1タイトル獲得の本命チームの1つとなっている。

 前半シーズン多くの負傷に苦しんだ川崎Fは、大きく注目されることもなく順位表の上位につけるような趣もまだなかった。リーグには7チーム(柏レイソル、横浜Fマリノス、ヴィッセル神戸、浦和レッズ、鹿島アントラーズ、ガンバ大阪、セレッソ大阪)もの異なるリーダーが存在したが、川崎Fは先を行く彼らを決して見失わなかったのだ。浦和との対戦が決まった英雄的なAFCチャンピオンズリーグ(ACL)準々決勝進出は言うまでもない。

 鬼木達監督は、4-2-3-1の基本形を維持する。常に実験的にシステムを変え続けた風間八宏前監督とは対照的だ。2016年にJリーグMVPを獲得した中村憲剛は、2017年は”ボランチ”としてよりも攻撃先導の”プレイメーカー”として配備されている。これはエドゥアルド・ネットと大島僚太の守備的ミッドフィルダーコンビが素晴らしく機能しているためである。ブラジル出身のエドゥアルドは、来日以来素晴らしい防御で守備に再び活気を与えてきた。一方クラブ史上初めて背番号10を着ける日本人となった大島は、深い位置からボールを分配する役割をとてもうまく遂行する。これによって中村の前線に上がってのプレーを余儀なくされた。ここに新たなジレンマが起こる。中村と家長というとても似たスタイルの選手をどのように合わせるか?という問題だ。

 等々力陸上競技場で行われた鹿島戦における3-1の快勝の中で、鬼木監督はその答えを導いた。中村と家長の両選手を攻撃先導として並んでプレーさせるのである。最初のポジションを見ると、中村が中央で、家長は右に位置していた。しかしこのG大阪、大宮アルディージャからやってきた選手家長は頻繁に中央に流れ、エウシーニョの走りを重複させるスペースができた。静かなシーズン前半期を経て、ついに家長は同試合で自身の力を示す。最初のゴールを組み立て、3点目のゴールを左足の美しいループシュートで決め、効果的に試合を確定させた。川崎Fでのリーグ初ゴールとなった。

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